
障害者、ホームレスら就労弱者に働く場を提供しようというソーシャルファーム(社会的企業)の成否を握るのは仕事、事業をいかに創り出すか。滋賀県で6月に開かれた「第2回ソーシャルファームジャパンサミット」では農業と福祉による農福連携、さらに商業、工業とつながる農福商工連携の実践が報告された。高齢化と人口減少で地方が疲弊する中、ソーシャルファームの役割の大きさに光が当てられた。
自ら雇用創出
「和歌山の経済状況は厳しく、就労弱者の雇用機会は少ない。経営体力のある企業も少なく、福祉を支援する余力がない。新規事業を起こし、雇用機会を創出しなければ根本的解決にならない」。実践報告で和歌山市の社会福祉法人「一麦会」理事の柏木克之さん(59)が実情を語った。
一麦会は1977年に障害児者、不登校、高齢者らの支援のため作業所を開設して以来、ひきこもり、ニート、難病、生活困窮者らも含め、社会で生きづらさを抱える人たちを包括的に支援してきた。就労継続支援A型事業所など各種事業所で、クリーニング業、印刷業、農産加工業、農業、飲食業、農産物販売などの事業を展開。現在では約200人が就労し、経済的自立を図っている。
加工技術蓄積
事業で大きな比重を占めるのは農業関連だ。「和歌山は農林水産資源は豊富にあり、地域資源を生かした仕事や商品を開発できる」。地域で小規模で栽培している農作物も、加工製造して付加価値を足すことで収益は生まれる。「加工場設備の整備と加工技術の蓄積でジュース、ゼリー、おかき、粉末製品などの受託加工製造が可能になった」。そうした積み重ねから「手作り納豆」などのヒット商品も生まれた。
地域の原材料を使ったこだわり商品は地域の加工業者が土産品として作った高価格のものが多い。「障害者施設商品は買いやすい価格の日常品として販売できる。大企業の低価格商品に対抗し、地域の量販店に食い込みたい」と意気込む。