
安倍晋三首相は安全保障関連法案を説明するため20、21日と相次いで民放テレビに出演した。日本と米国を家に見立てた模型やパネルを用い、新たな安保法制の必要性や内容を説明した。火事を例えにした説明の不明瞭さに加え、戦争と火事を同列に扱う発想に首をかしげる向きは少なくない。そこに透ける姿勢を問う声も上がる。
西穂波さんは礒崎陽輔首相補佐官にツイッターで論争を挑んだことで知られる18歳。集団的自衛権を火事に例えたことを「戦争は火事と違って少しでも他国の戦争に加担すれば自国も危険に晒(さら)す」と批判した。安倍首相によって再び持ち出された同じ例えに困惑する。
国のトップがテレビに出て模型を使い、これほどまでに意味不明な説明をするものなのかと驚いた。そもそも法案を衆院通過させておいて、国民の理解が進んでいないからテレビで説明するということ自体、順序が逆。また火事の例えが出てきて、この政権の人たちは代わり映えしないな、との印象も深まった。
その説明も言葉があいまいで理解できなかった。「米国の母屋」や「離れ」「日本の家」が現実世界で何を指しているか分からず、何に被害が出ているのかが分からない。火事の原因は何か、燃えている物は何か、現場は日本からどれくらい離れているのかも重要な要素なはずだが、それもよく分からない。
そうなると反論しようとしても難しい。なぜなら反論は比喩に即さなければならないが、その比喩が理解できないからだ。この混乱自体、安倍首相の作戦かもしれないと思えてくる。それは国民への侮辱だ。「理解しなくていい。俺たちが決めるのだ」という安倍首相の姿勢を意味するものだからだ。