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横浜・黄金町浄化10年
ゴールドマイン(5)逃亡した殺人の黒幕 

社会 | 神奈川新聞 | 2015年7月22日(水) 10:56

住民は2008年から、売春の象徴だった日よけ型看板の撤去を続ける。残り19個まで減った=14年11月
住民は2008年から、売春の象徴だった日よけ型看板の撤去を続ける。残り19個まで減った=14年11月

 横浜・黄金町にほど近いマンションの一室で、タイ人の男はスーツケースにのしかかり、力任せにふたを閉じようとしていた。

 愛人の女が消臭スプレーとブラシで、ケースの汚れを落とし切ると、2人は階下の自室に戻って、日暮れを待った。

 闇夜に紛れてタクシーを乗り継ぎ、横浜市都筑区の公園に向かう。ケースを転がして雑木林に運び、竹垣の奥に投げ捨てた。

 2日後。公園職員が、落ち葉に覆われたケースを見つけた。中身を確かめると、小柄な肢体がのぞいた。閑静な公園は騒然となった。

 県警特別捜査本部は、身元をタイ国籍の女性と特定。黄金町で「ジン」と呼ばれていた売春婦(32)だった。2005年1月、県警の一斉取り締まり「バイバイ作戦」の始動から12日後のことだ。



 黄金町のタイ人は当時、最も高い掛け金を払い込んだ出資者に積立金が配当される無尽講で互いを助け合っていた。売春宿の元経営者は「ジンは競り落とした無尽金を奪われ、消されたと聞いた」と証言する。

 捜査関係者によると、ジンが殺されたのは、現金190万円を受け取りに胴元の男を訪ねた日だった。母国に残した夫と8歳、9歳の息子に仕送りを続け、なかなか落札できない仕組みに不満を募らせながらも、ようやくつかんだ配当だったという。

 愛人の女は遺体発見から1カ月後、死体遺棄容疑で逮捕された。同じタイ国籍の売春婦だった。

 彼女の供述から、実行犯の男が浮かんだ。人身売買のブローカーだった。県警は殺人と死体遺棄容疑で男の逮捕状も取ったが、既に成田から出国し、バンコク経由でチェンマイに高飛びしていた。事前に入国管理局に出頭して偽造旅券で入国したことを明かし、犯行翌日の帰国が決まっていた。

 女は05年6月、横浜地裁で執行猶予付きの有罪判決を言い渡された。判決は実行犯の男との共謀も認定した。男の行方は、今も分かっていない。



 「殺しの黒幕は、ほかにいた」。捜査関係者が明かした。

 「黄金町の女ボス」と呼ばれた、男の義母。売春宿を共同経営していたタイ人という。組織的にタイから女性を取引して売春婦にし、暴力で支配した。殺人を指示した疑いで、この女も捜査線上に浮かんだが、タイに逃亡していた。

 かつて売春宿を経営していた女性(76)によると、黄金町の売春婦は1980年以降、次第に国際化した。韓国、台湾、フィリピン、タイ、中国、コロンビア、ロシア-。やがて、出身国別に互助組織ができると、売春宿を束ねていた飲食店組合の影響力も衰え始めた。

 組合長だった服部三郎(89)は「外国人経営者が増えるにつれ、街の秩序は失われていった。もうおしまいだと悟った」と振り返る。血なまぐさい記憶をたどりながら、元捜査員は独りごつ。「あの街は、とっくに限界を超えていたんだ」

 =敬称略

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