
集団的自衛権の行使を解禁し、戦後貫いてきた専守防衛を大転換させる安全保障関連法案が強行採決の末、衆院を通過した。時代の岐路は何を映し、世論の反発を顧みぬ政治に国民はなすすべがないのか。思想家・内田樹さん(64)に聞いた。
法案に対して全国各地でさまざまな規模の反対運動が繰り広げられていますが、たまりにたまった自民党に対する不快感があるレベル、閾値(いきち)を超えたという気がします。「もう、いいかげんにしろ」と。
特定秘密保護法の成立、集団的自衛権の行使容認、安倍晋三首相に近い作家百田尚樹氏や自民党若手議員による暴言、新国立競技場をめぐる責任の押し付け合い。こういった一連の出来事がボディーブローのように効いてきて、「この人たちに任せておいたら、日本はめちゃくちゃにされてしまう」と実感したのだと思います。
自民党若手議員の勉強会で報道機関に圧力をかけようと発言した議員たちは、これほどの反発を受けるとは想定していなかったのでしょう。メディアからの反発は脅せば鎮まると高をくくっていた。まさか一般市民から怒りの声が上がるとは思っていなかった。
実際、彼らはこれまで同じようなことをあちこちの講演会で発言し、そのつど「一般市民」から拍手喝采されてきたわけですから、何の危機感もなく言い放ったのだと思います。