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逗子市過失認める、慰謝料額は争う姿勢 ストーカー殺人情報漏えい訴訟

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月27日(火) 02:00

殺害された女性(遺族提供)
殺害された女性(遺族提供)

 逗子市で2012年に女性=当時(33)=が刺殺されたストーカー殺人事件で、加害者側に女性の住所を漏らされてプライバシーを侵害されたとして、女性の夫(46)が市に1千万円の慰謝料を求めた訴訟の第1回口頭弁論が26日、横浜地裁横須賀支部(庄司芳男裁判長)で開かれた。市側はプライバシーの侵害を認めつつ、慰謝料額については争う姿勢を示し、請求棄却を求めた。

 市側は答弁書で、女性の夫に成りすまして電話をかけてきた調査会社の男に、市職員が閲覧制限を掛けていた女性の住所を漏らしたことを認め、「職務上知り得た個人情報を漏らした過失がある」と自らの責任に言及。一方、情報漏えいと殺害の直接の因果関係を否定し、「損害は原告が主張するほど大きなものとは言いがたい」と訴えた。

 女性は市から情報が漏れた翌日、調査会社の男の情報を基に自宅に来た元交際相手の男=当時(40)、自殺=に刺殺された。遺族側は訴状で、個人情報の漏えいが地方公務員法の守秘義務違反にあたると指摘。女性はプライバシーを侵害され、精神的損害を受けたと主張している。

 閉廷後、逗子市側の代理人弁護士らが横須賀市役所で会見し、「情報漏えいが殺害につながることは予測できず、(慰謝料額は)一般論として高いのではないか」と述べた。

 代理人弁護士は「閲覧制限の掛かった個人情報が漏れた事実は動かし難い。賠償する責任はあると考えている」と説明。「(女性が)亡くなったという結果も踏まえ、原告と裁判所との間で妥当な金額を探っていきたい」と話した。

破格1000万円に遺族の思い


 逗子市が事実関係をおおむね認めたことで、争点は慰謝料額に絞られた。遺族側の求める1千万円は一見すると安価にも映るが、これは女性殺害の責任を市に直接問えないためだ。訴訟上の請求はあくまでプライバシー権侵害の対価で、その相場からはむしろ破格ともいえる金額に遺族の思いがにじむ。

 一人の命が奪われた、1千万円は安すぎる-。10月下旬に遺族の提訴が報じられると、インターネット上にはそんな趣旨のコメントが相次いで投稿された。

 なぜこの金額なのか。それは、遺族の請求内容が刺殺された女性の命の対価ではないことによる。

 民法上の損害賠償や国家賠償請求では、原因者の行為と損害との間に「相当因果関係」が成立することが要件として求められる。例えば、車にはねられ重傷を負った入院患者が病院火災で死亡した場合、患者は事故に遭わなければ死亡することはなかったと言える。だが、ドライバーは重傷に対する責任を負っても、火災による死亡責任までは問われないのが通例だ。

 今回のケースで遺族側は、情報漏えいという市の違法行為と殺害との間に直接的な因果関係を認めることは困難と判断。殺害行為の責任は元交際相手の男にあり、市の招いた損害はプライバシー権の侵害にとどまると解釈した。

 ただ、1千万円の請求は個人情報の漏えい事案では破格で、遺族の強い要望に基づき決定された。夫は「単なる個人情報ではなく、命を守るために閲覧制限を掛けていた情報が漏れた。命が危険にさらされたことを重視してほしい」と語る。市の落ち度が行き着いた結果の重大性を司法がどれほどくみ取るのか、その判断が注目される。

「教訓として全国へ」-女性の夫


 悲劇が二度と繰り返されないように-。元交際相手の男に殺害された女性の夫(46)は、その一心で提訴に踏み切った。だが、逗子市は請求棄却を求めた。

 「市が慰謝料請求を認めなかったことは残念ですが、裁判所がどういった判断を下すのか、経過を見守りたいと思います」。夫は閉廷後、代理人弁護士を通じてコメントを寄せた。

 先月6日は、事件から4回目の命日だった。女性の両親やきょうだいとともに、白やピンクの花を供えた墓の前で手を合わせた。「時間がかかったけど、ようやく裁判が始まる。見守っていてほしい」。胸の中でそっと気持ちを伝えた。

 女性は市から情報が漏えいした翌日、自宅に押し掛けてきた元交際相手に襲われた。「妻は市から情報が漏れたとは夢にも思わないで亡くなった。市の責任を追及するのは残された僕の役目」。仕事机やパソコン、未使用の名刺は当時のまま大切にとってある。

 事件から4年。ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー行為から逃れようとしている被害者の個人情報が行政や捜査機関から加害者側に漏れる問題が後を絶たない。「個人情報は命に直結する。その認識を事件の教訓として、全国の自治体に警鐘を鳴らしたい」

逗子ストーカー殺人 2012年11月6日、逗子市のアパートで、セミナーコーディネーターの女性=当時(33)=が、元交際相手の男=当時(40)=に刺殺され、男もその場で自殺した。県警は11年6月に脅迫容疑で男を逮捕した際、女性から明らかにしないよう求められていた結婚後の名字や住所の一部を読み上げていた。男は執行猶予付きの有罪判決を受けたが、保護観察中だった12年3~4月に「別の男と結婚した。契約不履行で慰謝料を求めます」などと千通を超えるメールを送信。当時のストーカー規制法ではメールの連続送信は「つきまとい」に当たらないとして立件できず、事件をきっかけに法改正された。

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