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市民運動の「武器」に 登場10年のネット印刷サービス

社会 | 神奈川新聞 | 2015年6月22日(月) 03:00

コンビニでのネット印刷では、店内のマルチコピー機に番号入力してプリントする=横浜市内
コンビニでのネット印刷では、店内のマルチコピー機に番号入力してプリントする=横浜市内

 インターネット上に登録した書類を、コンビニで印刷できるサービスが登場して10年余り。市民運動の有力な武器になりつつある。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と連動し、チラシ、署名用紙などを広めるのに重宝される。デジタルとアナログの融合は、県内外で利用が増えてきた。

 「草の根で運動するにはやはり紙。現物で働きかける力はいまだに大きい」

 コンビニでのネット印刷の魅力をそう語るのは、横浜市神奈川区の自営業男性(28)。2年ほど前、ある銭湯の移転話が浮上した際、工事反対と銭湯存続を求める署名用紙を広めようと利用。印刷時に必要となる「予約番号」と呼ばれる英数字8桁をフェイスブックに投稿した。

 「自宅にプリンターがない人もコンビニの端末で番号を入力すれば刷れる。SNSから火がついた運動を現実社会にも広められた」。結果、約1万1千筆が集まったという。

 名古屋市の男性(40)もよく利用する一人だ。自民党が今春発表した漫画「ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?」をめぐって、市民の立場から疑問をぶつけたいとチラシ「改憲マンガにだまされるな!」の制作に参加。ツイッターに予約番号を投稿すると反応が次々上がった。

 〈早速数枚プリントしてみた。友だちに配ろう〉〈これなら若者でなくてもできる〉〈皆さんこの際、プリントのやり方を身につけようではありませんか〉
 男性は言う。「権力の暴走を止めるのは、私たち国民一人一人。SNSで盛り上がるだけでは駄目で、ネットに触れない層、関心が薄い層ともつながらないといけない。紙で回すことがその大きな力になる」

 東京都品川区の男性(51)は、政府が進める安全保障法制に対する懸念から「私たちは戦争を拒否します」「嘘つきは独裁の始まり」といったプラカードの登録を続けている。予約番号をツイッターで拡散。見知らぬ人がデモで掲げる光景を、テレビなどで何度も目にしてきた。「ネット経由だと、面識がない人でも、遠方でも圧倒的に速く届けられる」

 手弁当で出費の多い市民運動。「ネット印刷はコンビニで刷る人が印刷代を払うから、草の根の全体で費用を分担できる。ネットを介するため郵送費もかからない」。

 コンビニでのネット印刷と市民運動との親和性については、有識者からも一定の評価の声が上がる。

 「デモや集会との関わり方が分からなかった人の参加のハードルを引き下げる効果がある」。そう分析するのは関西学院大学の金明秀教授(社会学)。ネットと紙との相乗効果で、争点や戦略などを広く共有でき、「運動の一体感醸成にもつながる」とみる。

 横浜市立大学の永松陽明准教授(経営情報論)は「人権や著作権の侵害がないよう、利用者の情報倫理の徹底がこれまで以上に求められる」と警告しつつ、「市民運動に限らず、新たな働き方など社会利益を生み出すツールになり得る」と話している。

 ◆コンビニでのネット印刷 インターネット上に登録・保存された文書や画像などの電子ファイルをコンビニで印刷できるサービス。富士ゼロックスが個人向けで2003年、セブン-イレブンの店舗で「ネットプリント」を開始。シャープはローソンなどで「ネットワークプリントサービス」の名称で展開している。ファイルを登録した際に割り振られる8~10桁の英数字を、店内のマルチコピー機に入力することでファイルを印刷できる。


コンビニでのネット印刷の案内を投稿した名古屋市の男性のツイッター画面
コンビニでのネット印刷の案内を投稿した名古屋市の男性のツイッター画面
 
 

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