箱根山(箱根町)の大涌谷で火山ガスの定点観測を続けている東海大の大場武教授は16日、立ち入り規制区域内で3度目の調査を行い、ガスの成分から「火山活動は終息しつつある」との見解を示した。活動の活発度の指標となるガス中の二酸化炭素(CO2)の比率が上昇していなかったためで、温泉供給施設からの蒸気も2週間前の調査時と比べさらに弱まっていたという。
気象庁や県温泉地学研究所によると、大涌谷周辺で起きる微小な火山性地震は一時より減少し、噴出する蒸気も弱まる一方、山体の膨張を示す地殻変動は続いている。このため、国の火山噴火予知連絡会は15日の定例会合で「小規模な噴火が発生する可能性はある」と指摘したが、大場教授は「これまでの活発な状況でも起きなかったのだから、今後噴火する可能性は低い」とみている。
同教授が継続しているのは、採取したガスに含まれるCO2の硫化水素(H2S)に対する比率(C/S比)から火山活動の高まりを見極める調査。
活動が活発化する前の4月24日に3・6だったC/S比は、噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられた2日後の5月8日に4・4、今月2日は10・0と上昇を続けていた。しかし、16日の調査では9・0とわずかに下がっていた。規制区域外の別の噴気地帯で行った調査でも、C/S比の推移は同じ傾向を示しているという。
また、温泉供給施設の蒸気井についても「蒸気の勢いが弱まり、音も静かになってきている。平常の状態に戻りつつあるのではないか」と分析。これらの状況を踏まえ、警戒レベルの引き下げについて「難しい判断だが、どこかで決めるべきだろう」と指摘した。