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創成会議の移住策に黒岩知事「違和感」 地域の縁、重要性指摘

社会 | 神奈川新聞 | 2015年6月5日(金) 03:00

 民間団体「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)は4日、東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増するとして、医療・介護の施設や人材に余裕がある富山市や鹿児島市など26道府県の41地域に高齢者の移住を促すよう政府や自治体に求める提言を発表した。菅義偉官房長官は記者会見で「地方の人口減少問題の改善や地域の消費需要の喚起、雇用の維持・創出につながる」と述べ、東京一極集中の是正に向けた地方創生の柱として高齢者移住を推進する方針を示した。

◇県内反応
 神奈川を含む東京圏の高齢者が今後10年で急増することに警鐘を鳴らし、地方への移住を促した日本創成会議の提言。介護予防などに力を入れる黒岩祐治知事は、医療・介護人材や施設の不足を理由とした移住策に「違和感がある」と反論した。



 神奈川では10年後、75歳以上の後期高齢者が46%増加し、約148万人に達すると推計されている。これに伴う介護需要も48%増が見込まれ、全国平均(32%増)を大きく上回る。

 日本創成会議はこうしたデータを基に、介護施設での後期高齢者の受け入れ能力を試算。神奈川では2025年に約2万3千床、40年には約3万1千床が不足すると推計した。医療面でも、40年には2次医療圏の「横浜西部」や「小田原」を除いて、後期高齢者の増加に対応したベッド数を確保できないとした。

 増田寛也座長は、首都圏の広域的な対応が欠かせないと強調。その上で神奈川について、「現在は東京からの高齢者の受け皿にもなっているが、比較的余裕のある県西部なども含め急速に介護、医療の提供が難しくなる。県外への移住策も考える必要がある」と指摘した。

 これに対し、市町村と連携して介護予防や在宅サービスの充実、施設整備を進める黒岩知事は、「帰郷希望者が移住しやすくなる方法の模索はあってもよいが、縁もゆかりもない土地に移住というのは違和感がある」と指摘。「医療、介護は(住み慣れた)コミュニティーあってこそ。人材や施設が充実していれば、どこでも安心というものではない」と訴えた。


●人口集中、是正も期待~解説~
 高齢者の地方移住をめぐっては、政府も具体的な検討に乗り出している。東京圏の医療・介護サービスの不足を補うだけでなく、人口の一極集中を是正する効果への期待があるためだ。

 政府は2月、有識者会議を立ち上げ、移住者の受け入れ拠点として住宅や医療・介護施設を整備するほか、ボランティア活動や生涯学習にも参加できる「日本版CCRC」と呼ばれる構想の実現を目指している。

 昨年末に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、2020年時点で東京圏から地方への転出者を13年より4万人増やす目標を掲げており、若い世代を地方に呼び込むだけでなく、高齢者の移住も対策の柱と位置付けられた。

 既に高齢化が進んでいる地方では医療・介護の関連職種に就いている若者は多い。東京圏の高齢者が移り住むことで、医療・介護関連の雇用が維持・拡大され、若者の流出防止につながると期待する向きもある。

 ただ、地方への移住は転居費用をはじめ個人の負担は大きく、長年住み慣れた場所から離れることに二の足を踏む高齢者も多いとみられる。老後に地方で暮らしたい人の希望をかなえるため、国や移住者の受け皿となる自治体は、住居費など生活コストを抑える仕組みを検討する必要がある。

 
 

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