
川崎市川崎区の多摩川河川敷で2月、市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が刺殺された事件で、横浜地検は21日、リーダー格の少年(18)を殺人と傷害罪で、事件当時17歳の少年(18)と1学年下の少年(17)の2人を傷害致死罪で起訴した。いずれも裁判員裁判で審理される。
地検は3人の認否を明らかにしていない。
起訴状によると、3人は2月20日午前2時ごろ、共謀して同区の多摩川河川敷で男子生徒の首をカッターナイフで多数回突き刺し、死亡させたとされる。リーダー格以外の2人については、殺意はない限りでの共謀にとどまるとした。
また、リーダー格の少年は1月17日にも、横浜市港北区内の駐車場で男子生徒の顔面を拳で殴り、全治2週間の傷害を負わせた、とされる。
地検の起訴は、横浜家裁の検察官送致(逆送)を受けた処分。今月12日の家裁の少年審判での決定では、少年3人が事件で果たした役割は大きいなどとして「刑事処分が相当」と結論付けていた。
県警によると、リーダー格の少年と事件当時17歳の少年は同じ市立中学出身の同級生で、1学年下の少年と男子生徒は同じ少年グループの一員。
複数の関係者によると、家裁の少年審判でリーダー格の少年は殺人容疑を認めた。他の2人は刑事裁判の無罪に当たる「非行事実なし」を主張した。
当時17歳だった少年は男子生徒を切り付けたこと自体を否認したが、家裁は他の2人の証言から男子生徒を傷つけたと認定。もう1人の少年は切り付けたことは認めたが、リーダー格に脅されてやむを得ない状況だったと主張。刑の減軽や免除を定めた刑法の「緊急避難」の適用を求めた。
地検「解明に不可欠」
男子生徒の殺害に関与したとされる少年3人のうちリーダー格の少年を、地検は殺人罪に加え、傷害罪でも起訴に踏み切った。殺人事件の直前に起きた傷害事件の審理も「全体の真相解明に不可欠」(地検)としている。
捜査関係者によると、傷害事件の際、リーダー格の少年は男子生徒と知り合って1カ月ほどだったが、電話の返信が遅いことなどに逆上。横浜市港北区の駐車場で暴行を加えたといい、傷害事件後に男子生徒の友人たちは少年に謝罪を求めている。少年と男子生徒の間にあった一連の経緯を解明することを、地検は重視したとみられる。
起訴された3人は裁判員裁判で審理される。未成年のまま判決を迎えた場合、少年院送致などの保護処分のほうがふさわしいと裁判所が判断すれば、少年法の規定で事件を再び家裁に移送することもできる。ただ捜査関係者は今回の事件について「悪質さからみて、家裁への移送決定の可能性は低い」とみている。