山下公園(横浜市中区)前に係留されている「日本郵船氷川丸」が25日、85回目の“誕生日”を迎え、記念イベントが開かれた。船の形をしたバースデークッキーの無料配布や、氷川丸船内のホールを練習の場として活躍する横浜少年少女合唱団が歌声を披露し、記念日を祝った。
氷川丸は1930年、シアトル航路用に建造された貨客船。太平洋戦争前は、秩父宮ご夫妻、チャーリー・チャプリンらが乗船、横浜港から生糸などの輸出でも活躍した。
戦時中は病院船として、戦後は引き揚げ船として使われた。53年にシアトル航路に復帰し、60年に引退するまでに計約2万5千人の船客を乗せた。翌年から山下公園前に係留され、ユースホステルや結婚式場、デッキはビアガーデンとして使われるなど長年にわたり親しまれてきた。
日本の造船技術や客船の船内インテリアを伝える貴重な産業遺産として2003年に横浜市指定有形文化財に指定され、08年に「日本郵船氷川丸」としてリニューアルオープンした。
85歳の誕生日となった25日、氷川丸は、開館直後から親子連れやシニアなど幅広い年代が訪れ、一日中にぎわっていた。
03年から第28代船長を務めている金谷範夫さん(64)は、「年間30万人前後の方に来ていただき、支えられてきた。氷川丸は横浜の顔で、後世に残すべきもの。これからも多くの人に来ていただきたい」と話した。