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シリア名産せっけん脚光 苦難な状況思いはせる

社会 | 神奈川新聞 | 2015年4月19日(日) 10:12

シリア製のせっけんを輸入する「アレッポの石鹸」の太田さん(右)ら=東京都福生市
シリア製のせっけんを輸入する「アレッポの石鹸」の太田さん(右)ら=東京都福生市

 内戦が続くシリア。困難な状況にある同国市民に思いをはせ、伝統のせっけんを買うことで支えようという動きが県内外で出ている。台頭する過激派組織「イスラム国」の影響で広がった偏見と向き合う流通関係者もいる。

 鎌倉市に住む女性(33)は5年前に出合い、使い続けている。オリーブと月桂(げっけい)樹の油を主成分に、深緑色と独特な香り。「天然素材に安心し、素朴さにも引かれた」のが契機だ。

 「体だけでなく髪も洗え、しっかりと汚れが落ちる。それでいて肌にも優しく、洗い上がりがいい」。愛着を持って使ううちに、せっけんの先にある現実に目を向けずにいられなかった。

 中東の民主化運動「アラブの春」から波及した2011年からの内戦、取材中に銃撃を受けたジャーナリスト山本美香さんの死、そして今年1月の日本人人質事件-。

 「シリアはこんなすてきなせっけんも作っている国なんだよ、というところにもっと関心が向けばいいのに」と悔しがる。

 そうした思いはこの女性ばかりではなかった。


 〈内戦に加えイスラム国まで入り込んできて、石鹸どうなるのだろう…〉〈アレッポの石鹸を見かけて、つい買ってしまった。この石鹸を作っていた人が無事でありますよう〉
 1月の事件後、短文投稿サイト「ツイッター」には、せっけんを通じてシリアに思いを寄せようとする投稿が増えた。

 企業も動いた。シリア市民支援の一環で昨夏から店内販売する都内のカフェ「ベルク」(東京都新宿区)は今年、バレンタインデーにせっけんを贈る企画を初めて実施。

 副店長の迫川尚子さん(53)は「イスラム国のことを直接話し合うことはなくても、多くの人が少なからず意識はしたと思う。せめてせっけんの購入を通じ、シリアの人々を応援できないかと」。結果、100個が売れた。


 横浜市西区の大型雑貨店「横浜ロフト」では「週平均で30個は売れる。安定した人気」と担当者。仕入れ先からいつ欠品になるか分からないとも言われており、「数を確保しながら今後も販売を続けたい」。

 人気が静かに広がる一方、1994年からの最古参という輸入会社「アレッポの石鹸」(東京都福生市)には「せっけんがイスラム国の収入になっているのではないか」との問い合わせが増えたという。

 共同代表の太田昌興さん(45)は首を振る。「工場はそもそも内戦勃発後に安全な地中海側に疎開したし、シリア政府の機関を通しているからこそ輸出ができている。なのに分かってもらえない。もっと証拠はないのか、と堂々巡りをする。取引を止められたケースもあった」


 偏見を感じずにいられない太田さんは「内戦やイスラム国の印象でシリアをひとくくりにしないでほしい」と強調する。職人の手作業で、熟成を含め製造に2年もかかるせっけん。遠く離れた日本に今なお届くことこそ、危険や不穏だけではないシリアの日常を示している。

 小売価格630円という小さな存在だが、千年を超える伝統を多くの市民が支えてきた。太田さんは言う。「買われることもうれしいが、使ってみて『いいな』と感じてもらえることが本当の喜び。そんな共感が広がっていくことが、きっとシリアの人々の力になる」


売り場に並ぶシリア製の石鹸=横浜ロフト
売り場に並ぶシリア製の石鹸=横浜ロフト

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