県立金沢文庫(横浜市金沢区)は16日までに、現存最古の可能性が高い仏典の古写本「華厳経問答(けごんきょうもんどう)」(上、下巻)を発見したと発表した。南北朝時代(14世紀半ば)のもの。同文庫が東洋大学との仏教史の共同研究のため、所蔵する称名寺伝来の古文書約2万点を調査する中で見つけた。
「華厳経問答」は、仏教研究者のもっとも基本的資料の一つ。問答とは、高僧が行った経文の講義を弟子が書き記したものだ。
大正時代の仏教研究家・小野玄妙が所有していた平安時代末期ものが最古といわれるが、現在、所在が不明になっている。このため、称名寺の僧、湛睿(たんえい)(1271~1346年)の蔵書だった今回の写本が、現存する最古のものとなる可能性が高い。
現在、出回っている一般的な活字版は「小野玄妙本」を下敷きにしているが、発見された写本は、活字版と文字が違うところが数カ所あるという。発見者の道津綾乃主任学芸員は「系統の違う本があったことをうかがわせる。文字が変わると、意味も変わる。今後の研究で『華厳経問答』の内容が違ってくることも考えられる」と話している。