東日本大震災の被災地の治安維持を目的に福島県警に特別出向していた神奈川県警の警察官13人が1日、帰任した。県警本部(横浜市中区)で辞令の交付を受け、それぞれが新たな職場での勤務をスタートさせた。
13人は昨年4月から福島入りし、行方不明者の捜索や地域の見回りに当たってきた。震災発生当時、福島県警本部長だった松本光弘本部長は帰任式で「皆さんの活動は被災地の住民の心のよりどころになったことでしょう」とねぎらった。
県警では2011年4月以降、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の各県警に計82人が長期出向し、このうち21人が現地の県警に転籍した。
◇古里のため心砕く 佐藤巡査部長
福島県郡山市出身の佐藤誉雄巡査部長(33)は県北部にある伊達署に配属され、出向者で構成される「復興支援係」として仮設住宅などを巡回して避難者の心のケアに心を砕いてきた。
忘れられないのは、毎月11日の月命日に実施している行方不明者の捜索だ。
東京電力福島第1原発がある大熊町での捜索では、がれき置き場近くの土の中から泥まみれになったビニール製の名札を見つけた。
津波に流され、町で最後の行方不明者になっている小学校低学年の女児のものだった。名札は最寄りの警察署を通じて娘を捜し続ける父親の元に届けられた。「お父さんにとても喜んでもらえたと伝え聞き、よかったと思いました」
「古里のために」-。長期にわたる任務を支えたのは、復興を願う強い気持ちだった。今月から茅ケ崎署に配属され、交番勤務に就く。「地域の人と接する機会が一番多い場所。福島の今を伝えていきたい」