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刻む2016〈2〉ゴーン氏 再生へ第2章

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月17日(土) 09:49

提携を初めて発表した三菱自動車との共同会見で雄弁に語る日産自動車のカルロス・ゴーン社長。新年から三菱自会長として本格的に采配を振るうことになる=5月12日、横浜市神奈川区
提携を初めて発表した三菱自動車との共同会見で雄弁に語る日産自動車のカルロス・ゴーン社長。新年から三菱自会長として本格的に采配を振るうことになる=5月12日、横浜市神奈川区

 三菱自動車の燃費不正問題の発覚からわずか3週間の5月に資本業務提携を電撃発表し、人々を驚かせた日産自動車(横浜市西区)のカルロス・ゴーン社長。10月には、ゴーン社長が三菱自の会長職に就く人事も明らかとなり、再び業界の話題をかっさらった。

 日産と三菱自が提携に向け基本合意したことを突如、発表したのは5月12日。もともと午後に予定されていた日産の決算会見を急きょ後ろ倒しにし、横浜市内で共同会見が開かれた。詰め掛けた内外の記者やテレビクルーで満杯の会場では、ゴーン社長の雄弁が際だった。

 「三菱自との新たな企業連合は両社の成長のチャンスを約束するものだ」「巨額の投資になるが、十分な効果が見込める。今回の投資は、買いだ」…。

 身ぶり手ぶりも交え、快活なゴーン社長。一方、その横で演台に支えられるように立つ三菱自の益子修会長-。対照的に見えた両首脳だったが、この提携が「救う者」対「救われる者」という単純な構図に収まらないことは自明だった。

 象徴するのはゴーン社長の「単独のメーカーで全ての要求を満たしていくには限界がある」との指摘。近年、自動運転技術に代表されるクルマの高度化、電動技術の進化、軽自動車など多様な顧客ニーズへの対応とメーカー間の競争は苛烈さを増しているからだ。

 当時の会見でも、日産が苦戦する東南アジアで持つ高い訴求力をたたえ「強みを補い合い、ウィンウィンの関係を目指したい」と再三強調。今秋以降は「三菱自のプラグインハイブリッド車(PHV)技術をアライアンス標準にする」と言明するようになった。

 いずれにせよ、日産は大きな好機を得た。日産・ルノー連合に三菱自が加わり、世界販売台数はグローバル4位の959万台。年間1千万台前後で競うトヨタやフォルクスワーゲン(VW)、ゼネラル・モーターズ(GM)の「新ビッグ3」と並ぶどころか、その3強を崩す射程に入ったともいえた。

再びの暗転



 7月から両社は軽自動車の販売を再開し、三菱自の燃費不正問題の負のイメージを拭い去っていくはずだった。が、晩夏に再び暗転する。三菱自が独自で行った燃費の再測定でも不正な方法で測定していたことが発覚したからだ。国に「常軌を逸する」と言わしめ、益子会長が再度謝罪した。

 この事態に日産幹部からも不満や疑問が噴出した。

 西川廣人副会長は会長職を務める日本自動車工業会の会見で、「既に大きな不信感を招いているのに非常にまずい。個社で起きたことが全体への不信感にもつながっており、とんでもない。不正の根絶を徹底してやってもらわねばならない」と口調を強めた。

 なぜ、不祥事をなくせないのか。別の日産幹部はこう指摘した。「三菱自には上に(三菱系の大株主の)重工、商事、銀行の人たちがいて、自動車のプロパーが物が言えなくなっているようだ」。三菱自は、00年代にリコール隠しで大きな社会問題を引き起こした過去がある。「不祥事や失敗のたび、(大株主の)幹部から『あの時、三菱グループが莫大(ばくだい)な金を入れてやったのに』とか『三菱グループがえらい目に遭っているんだぞ』とバッコンバッコンやられてきた。悪い情報が下から上げられなくなっている。上も上で現場に行っておらず、行っても現場からいろいろなことを教えてもらえなかったようだ」とこの幹部は明かした。

 不正の再発覚後、担当記者の間で「提携に何らかの水を差すのではないか」との観測が流れ、あわただしくなったのは事実だ。

 見かねたある日産役員は10月中旬、トヨタとスズキが業務上の提携を発表したことを引き合いに出しながら、「うちは(資本が伴う提携で)よそと次元が違うから。法律的なものとか、いろいろ作業があるだけ」と火消しにまわった。

注目の人事



 提携に向けた出資完了が正式に公表されたのは10月20日だった。加えて大きな話題を呼んだのは、固辞していた益子会長が三菱自の社長として残り、ゴーン社長が会長という最頂点の地位に就く人事だった。

 しかし、その裏で記者が気になったのは日産側から三菱自の取締役メンバーに入った役員の人数だった。ゴーン社長のほか、渉外担当の川口均専務執行役員、経理担当の軽部博常務執行役員の3人という数字。

 実はこの発表3日前、ゴーン社長に近いある幹部が「出資に見合った役員は出さないといけない。4人の枠は変わらないと思う。あとは会長と社長がどうなるか」と説明していたからだ。

 益子会長が残留意向を示したのは発表当日の20日といい、今振り返ると、例の幻の4人目もカードに含めながら短期間でかなり厳しい交渉が行われたということだったのかもしれない。

 こうして三菱自が日産の傘下に無事入った後、三菱自に部品を納める県内メーカーにも多く取材を試みた。ある業者は4月の燃費不正問題発覚後、生産済みの部品の受け入れがストップしたり、その後の機会損失が生じたりしたが、「三菱自に補填(ほてん)請求はしなかった」。理由を問うと「これまで仕事させてもらってきたから。ゴーンさんの下、また立ち上がると信じている」と疑わなかった。

 また日産系のサプライヤーのある幹部も「今後は三菱自さんの関係の部品(の仕事)ももらえると思っている」と鼻息が荒く、既に数年先を見据えていた。

 こうした声からも分かる通り、日産の決断が、関わる無数の企業とそこで働く大勢の人々のあすを大きく左右する。三菱自が加わり、範囲はさらに広がったといえる。先頭に立つのは、かつて親会社の仏自動車大手ルノーから日産に乗り込み、今日の再生を築いたゴーン社長だ。企業再生の物語は三菱自に舞台を変え、新年から第2章が本格スタートする。

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