原発事故で原子炉内に生じた溶融燃料「燃料デブリ」の分布を測定する装置が27日、横浜市磯子区の東芝生産技術センターで報道陣に公開された。廃炉作業が続く東京電力福島第1原発向けに開発されたもので、2015年度内に測定開始を目指す県内発の新技術だ。
物体を通り抜ける性質がある宇宙線の一種「ミュオン」を測定する巨大なプレート状の検出器(縦約7メートル、横7メートル、厚さ1メートル)2機などを含む装置で、東芝と国際廃炉研究開発機構(IRID)が開発した。
ミュオンの透過具合で物質の位置を調べる技術はあったが、「ウラン、鉄といった物質の識別ができるようになったのが大きな特長の一つ」と東芝担当者。廃炉作業の効率化の観点から、「デブリの分布が正確に把握できれば取り出す作業の手順や工法に生かせる」という。
事故直後から研究に乗り出した米ロスアラモス国立研究所が開発した「散乱法」と呼ばれる測定方法をベースに、高い放射線環境に対応できるように放射線ノイズを除去する技術を加えて完成。3月から性能試験に着手した。
福島の現場では、原子炉建屋の屋外の東西2方向から挟む形で検出器を設置するという。測定するのは第1原発2号機の予定で、「今夏以降に装置を現地に運び込む」としている。
この日の報道陣向け公開で実際に測定試験を行う予定だったが、プログラムの不具合で行われなかった。今後も県内で試験を続けるという。東芝の現場担当者は「早期のデブリの取り出しに役立てられ、より適正な廃炉作業に生かされれば」と期待を込めていた。
◆ミュオン(ミュー粒子)
宇宙空間から地球に降り注いだ高エネルギーの電子などが、大気に含まれる窒素や酸素と衝突し発生する宇宙線の一つ。物体を通り抜ける能力が高く、ピラミッドの内部調査や火山の密度測定などに利用される。地上には、1平方センチメートル当たり毎分1個が降り注いでいるといわれる。
【神奈川新聞】