秦野赤十字病院(秦野市立野台)の産婦人科が派遣医師の引き揚げにより休止している分娩(ぶんべん)の再開を求め、「10万人署名活動」を行ってきた市内の市民団体が24日に県庁を訪れ、集まった署名6万1651筆を吉川伸治副知事に手渡した。
同病院の産科にはこれまで、昭和大学(東京都品川区)から3人の医師が派遣され年間約700件の分娩を担ってきたが、昨年5月に同大が医師全員の引き揚げを通告。県や同病院などとの協議で最終的に2015年度は産科医が1人残って産科は継続することとなったが、今年2月から分娩は休止している。
地域からお産の場が失われることに危機感を持った市民らが、「住みたいまち、住みよいまちをつくる会」を結成。インターネットや駅頭などで署名を集め、同病院県支部長を務める黒岩祐治知事に再開を訴えようと活動してきた。
この日、同会から署名を受け取った吉川副知事は「(再開に向け)一生懸命に努力をする」と返答。同会メンバーで秦野・伊勢原・中郡産婦人科医会の会長を務める平井規之医師は、「6万超という数字の意味は大きい。一方で署名を通して初めて危機的な現状を知った人もいた。『困った』では終わらせられない問題だ」と強調した。
同会では今後、秦野日赤病院を県西部の基幹的病院としていくことを目指した署名活動を展開するとともに、産科医受け入れの環境整備を進めるため、条件面など市や同病院への働きかけを行っていくという。
同会の世話人を務める草山清和さんは「副知事は『ぜひ協力しあっていきたい』と言ってくれた。県西部の危機的な周産期医療を立て直すとともに、秦野を子育てのしやすい街にするため、今後も活動を続けていく」と話していた。
【神奈川新聞】