藤沢署の刑事・生活安全担当次長に、石垣由美子警視(57)が今月着任した。大規模署の部門ごとに置かれる次長職は課長の上に立つ要職で、生え抜き女性の就任は県警で初めて。とかく「女性初」の言葉がついて回る立場にプレッシャーもあるが、「後進に道を切り開きたい」と意欲を燃やす。
石垣警視は、県警で5人(うち1人は警察庁出向中)しかいない生え抜き女性警視の1人。前職は捜査1課性犯罪捜査担当代理で、捜査はもちろん被害者支援にも尽力してきた。
「剛だけでなく柔の部分も大切にやっていきたい」。力強く犯人に迫る捜査が「剛」なら、被害者に寄り添うきめ細かい姿勢が「柔」というわけだ。
父親が警察官だったこともあり、大卒後の1980年に憧れて県警入り。83年に結婚し2人の息子を育てながら仕事を続けた。「大変だったが、警察官を辞めたいと思ったことはない」。きっぱりと話す。
そのころから漠然と事件捜査に携わりたい思いはあったが、「前例もほとんどなく、子育てとの両立も難しい」と考えていた。20年ほど前、1度目の藤沢署赴任が転機となり、交通捜査を皮切りに刑事のノウハウを学んだ。
その後も交通機動隊や警察学校教官、県警音楽隊副隊長など幅広い分野で活躍。経歴にはいつのころからか、「女性初」や「女性の先駆け」といった言葉がついて回るようになった。
心に残る捜査は「藤沢署で最初に扱った交通死亡事故。実況見分の手が震えたことを覚えている」。そんな原点の地に再び赴くことになり、「近年の藤沢は性犯罪が多い。前職の経験も生かし、まずはこれに取り組む」。市民の安全安心へ、力を込めて語った。
【神奈川新聞】