「説明不十分」で
申告しなかった高校生の長女のアルバイト収入を「生活保護費の不正受給」とされ返還を命じられたとして、川崎市の男性が市に処分取り消しを求めた訴訟の判決が11日、横浜地裁であった。倉地康弘裁判長は「アルバイト収入の申告義務をケースワーカーが説明していなかった」として、市に処分の取り消しを命じた。
判決によると、男性と妻は共に病気で働くことができず、2010年から生活保護を受給。長女は高校2年から3年にかけて、アルバイトで計約32万円の収入を得たが、11年に市の課税調査で判明するまで、市に伝えていなかった。
倉地裁判長は、受給者向けのしおりに記載されていた高校生のアルバイト収入の申告義務について、担当のケースワーカーがしおりの内容を丁寧に説明しないなど男性に伝えていなかったと認定。しおりの交付だけでは不十分とし、男性が故意に申告しなかったとする市側の主張を退けた。
また、約32万円のうち修学旅行費に充てた分は国が定めた要領に基づく「収入」に当たらない上、それ以外の分も大学受験料などに使われたことから、「ただちに不正受給とするのは酷な面がある」と指摘した。
川崎市の福田紀彦市長は「判決内容を確認し、今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
保護費受給世帯の高校生のアルバイト収入について、国は昨年3月に要領を改正。同4月からは就労や早期の保護脱却のための分は、「収入」と認定しないよう改めている。
【神奈川新聞】