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波紋 安保法制<3>
期待 能力と役割のはざま

社会 | 神奈川新聞 | 2015年3月4日(水) 03:00

掃海演習で機雷処分具を海中に投入する掃海艇「つのしま」乗員=2014年11月、日向灘
掃海演習で機雷処分具を海中に投入する掃海艇「つのしま」乗員=2014年11月、日向灘

 海上自衛隊にとって、初の海外任務だった。

 横須賀と呉、佐世保をそれぞれ出港した海自の艦船は約1カ月かけ、1991年5月27日にドバイに入港。湾岸戦争でペルシャ湾にまかれた機雷を除く掃海任務に就いた。

 500トン程度の掃海艇は大柄ではない。1週間ごとに食料や水を補給しながらの航海。出港時には現場の海図さえ手元になく、往路最後の寄港地カラチでコピーが届いた。

 任務は3カ月間にわたった。生身の隊員が水中に潜り、爆薬を取り付けて処分した機雷も少なくない。

 □ ■ 

 派遣部隊は掃海艇と掃海母艦、補給艦の6隻。護衛艦は含まれていなかった。

 出発前の91年4月に、和平条件を定めた国連安保理決議687をイラクが受諾し、停戦状態が発効。派遣された地域は、国際法上は戦闘が続いていないとされていたからだ。

 だが-。当時1佐として指揮官を務めた落合畯氏(75)にとって現場は、安全を実感できる環境ではなかった。

 「現地では非国家組織が活動していたから、米軍に守ってもらいながらの任務だった。一人も負傷者を出さずに帰ってこられたのは、奇跡に近かった」

 機雷は「武力行使」として敷設されるため、自衛の場合を除けば機雷除去も憲法の禁じる武力行使とみなされる。ペルシャ湾への派遣は、戦闘が終わった後に放棄された機雷を取り除くとの位置づけで、国際貢献の先駆とも目された。

 一方、今回の法整備で安倍政権は、ペルシャ湾の出口にある中東・ホルムズ海峡で、集団的自衛権を行使する形での機雷掃海に前向きだ。日本への原油輸送ルートの安全確保ができなければ、昨年7月の閣議決定が新たに定めた「武力行使の3要件」に当てはまる可能性があるとの考えからだ。「この海峡を通って多くの石油が日本にやってくる」。3日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相が意欲を示した。

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 日本の掃海能力に対する評価は高い。終戦直後、機雷で封鎖された日本周辺海域で航路の啓開活動に携わり、朝鮮戦争でも特別掃海隊として活動に参加した歴史を持つ。湾岸戦争後には米軍も佐世保に掃海艇を配備したが、アジア太平洋地域の足掛かりでもある日本近海の安全を担う海自への期待は大きい。

 「朝鮮半島有事の機雷戦では、特に初期段階で日本の部隊が重要になる」。米第7艦隊のロバート・トーマス司令官は昨年10月、集団的自衛権の行使容認をめぐる議論で海自の貢献への希望を隠さなかった。「米軍が日本の支援を望み、韓国はそれを受け入れるか。答えは両方とも『イエス』だと思う」

 しかし、朝鮮半島有事のどんな状況が閣議決定の要件に当てはまるのか-。具体論はまだ煮詰まっていない。ある与党幹部は、こう漏らす。「この説明はペルシャ湾よりよほど難しい。日本と米軍の想定にずれがないか、慎重な検討が必要だ」

【神奈川新聞】

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