「緊縮策は過去のものになる」。ギリシャの総選挙で大勝した急進左派連合のチプラス党首が支持者を前に宣言したそうだ。年金のカット、増税…。財政再建へ向け窮乏を甘受してきた国民の間には「緊縮疲れ」がまん延。政権交代につながったという▼借金をしている以上、質素倹約は当然とばかりに金融支援を行っている欧州連合(EU)の各国は緊縮財政の継続を求め一歩も引かない構え。支援策の期限が切れる2月末が迫っているのだが、両者の溝は埋まらない▼翻って日本。経済成長と歳出削減を続けても、国と地方の基礎的財政収支は黒字化の目標である2020年度になお赤字が残るとの試算を内閣府が公表した▼ユーロ危機の震源地となっているギリシャが抱える借金残高は約38兆円とされる。一方、日本の借金は1千兆円を突破。国民1人当たり実に約919万円に上る。一見、日本の方がはるかに危ないようだが、国会の論戦でも切迫感があまり感じられないのはなぜか▼産業力や国債の国内消化などの経済財政構造の根本的な違いが背景にあるが、14年の貿易黒字(経常黒字)は過去最少、高齢化で貯蓄率も低下傾向だ。借金を放置すれば最終的には国民につけが回る。ギリシャ問題の迷走から浮かぶ教訓だ。
【神奈川新聞】