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【社説】就活解禁繰り下げ 空しく響く「学業優先」

社会 | 神奈川新聞 | 2015年2月19日(木) 11:13

今シーズンから、大学生の就職活動が様変わりしている。学生の学業優先を目的に従来の日程を繰り下げたが、かえってスケジュールが見えづらくなり、学生側から不安の声が上がっている。

日程変更は、経団連が定めた「採用選考に関する指針」による。2016年卒業予定の学生から、企業説明会は3年生の12月1日から3月1日に、面接などの選考は4年生の4月1日から8月1日に、それぞれ解禁が繰り下げになった。正式内定は10月1日と変わっていないため、短期決戦の様相を呈している。

県内にある大学の就職課が、訪れた企業の採用担当者を対象に、ボードにシールを貼ってもらう簡単なアンケートを取った。「採用スケジュールを守る予定」よりも、「守りたいけれど、恐らく守れない」の方が圧倒的に多かった。

指針はあくまで経団連に所属する1300社が対象の“紳士協定”であり、罰則規定はない。外資系などは既に採用活動が本格化しており、IT企業が多く加盟する新経済連盟は日程を変更していない。今月には経団連の会員企業による合同説明会さえ開催されている。

このような状況が学生側に疑心暗鬼を生んでいる。スケジュール変更に関し、昨年末に民間の就活支援会社が実施した学生を対象にした調査では、「学業に専念できない」が半数を超え、「専念できる」の13%を大きく上回った。

人手不足感が強まるなか、採用側には焦燥感も漂う。文部科学省、厚生労働省の調べによると、年末時点での就職内定率は80・3%で4年連続の改善。特に女子は81・9%となり、調査開始の1996年以降、最高となった。文科省は「景気回復を受け、金融機関を中心に女子学生の採用意欲が高まった」と分析する。

かねて就業体験(インターンシップ)を実施する企業は多いが、今季はワンデーインターンと呼ばれるタイプが増えているという。たった1日では有益な就業体験は望むべくもない。企業側の、がむしゃらに学生との接点を増やそうとする意図が鮮明になっている。

企業、学生の双方に混乱がある。これは初年度ならではのものか、日程変更に無理があるからなのか。いずれにしても、「学業優先」のうたい文句が色あせぬよう、検証や見直しが必要である。

【神奈川新聞】

 
 

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