住民の逆転敗訴に終わった厚木第4次訴訟はしかし、門前払いされ続けた航空機の飛行差し止め請求を、初めて審理の対象として認めさせる「新たなステップ」(福田護・弁護団副団長)を踏み出した。
決め手は、騒音がもたらす健康被害の切迫性にほかならない。騒音と身体的被害の関連が「問題となり得る程度まで至っている」と言及した二審までの判断を維持し、最高裁は騒音が「生活の質を損なう」と断定した。とりわけ睡眠妨害は「相当深刻」と踏み込んでいる。
これまでの基地訴訟は、騒音と健康被害の因果関係を全面的に否定する司法判断が全国で定着していた。弁護団は4次訴訟で世界保健機関(WHO)の指標を取り入れ、健康影響を数値化した医学的な立証を積み重ねた。訴訟要件の「重大な損害の恐れ」を認めさせ、うるささの程度に応じた慰謝料は3次と比べて月千~4千円が増額された。
厚木の漸進を導いたのが、基地訴訟最古参の小松(石川県)だ。医師らの健康影響調査を証拠として提出し、騒音による身体的被害の立証を続けている。小松訴訟団の長田孝志代表(73)は「横断的な協力なくして、国家権力に立ち向かえない」と信じる。