JR南武支線の新駅「(仮称)小田栄新駅」(川崎市川崎区)が来春に開業すると発表された29日、川崎新町-浜川崎駅のほぼ中間に位置する設置予定地の周辺住民には、期待と戸惑いが交錯した。武蔵小杉地区などへの利便性アップに弾みがつく一方、「川崎駅に直結しなければ意味がない」と、新駅誕生の効果を疑問視する意見も聞かれた。
予定地近くの「小田踏切」からは、隣の川崎新町駅がはっきりと視界に入る。同駅と浜川崎の距離は約2キロ。「初耳です。歩く距離が短くなるのはありがたい」。在住40年という主婦(70)は、身近な新駅の存在は高齢者らに優しいと歓迎する。
予定地周辺は、日本の高度成長期を支えたかつての工場群の一角。1990年代以降、事業所の地方移転が進み、宅地に転換された。象徴的なのが、高層マンションや複合商業施設が相次いで誕生した小田栄2丁目地区(約15・6ヘクタール)。2005年末にわずか10人(5世帯)だった人口は、14年末に4705人(1686世帯)まで急増した。
官公庁や大型商業施設が集まる川崎駅まで、バスや自転車で約15分という立地。在住20年という男性(78)は「(尻手で南武線に乗り換えて)武蔵小杉方面へ出る人には便利になる」と、買い物や娯楽の選択肢が広がると期待を寄せる。
一方、南武支線は朝のラッシュ時でも最大で1時間4往復。昼間は1往復の時間帯があるなど運行本数が少なく、子育て世代の主婦らの反応はいまひとつだ。
線路沿いの大型マンションに転居して1年余という女性(34)は、これまで一度も同線を利用したことがない。新駅にも「(ターミナル駅の)川崎駅に直結しなければ微妙…。バスの路線や便数を増した方が、地元の人は喜ぶのでは」と指摘する。
「(平らな地形の)川崎区は自転車の街」と話す別の女性(39)も、市内で24カ所目となるJR駅誕生のニュースに驚きや喜びは少ない。「お金を掛けて駅を造るより、まずは運行本数を増やすのが先」と話していた。
【神奈川新聞】