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存続揺れる近代美術館鎌倉館 県教委の調査結果公表

社会 | 神奈川新聞 | 2015年1月24日(土) 03:00

坂倉準三による環境と一体となった設計が高い評価を受けている県立近代美術館鎌倉館=鎌倉市
坂倉準三による環境と一体となった設計が高い評価を受けている県立近代美術館鎌倉館=鎌倉市

◇「補強 遺構損なわぬ」

戦後日本のモダニズム建築の代表的な建物とされる県立近代美術館鎌倉館(鎌倉市雪ノ下)の存続問題で、県教育委員会は23日、今後の扱いを検討するために行った建物調査の結果を公表した。存続させる上で焦点となる耐震補強工事の可否に関しては「(鶴岡八幡宮境内の)地下遺構を損なわずに実施することは可能」とした上で、工事する場合の概算費用を約2億1千万円と算出した。

同館が立つ鶴岡八幡宮と県との借地契約は2016年3月末に満了する。返還時は更地にする契約になっているが、県教委は今回の結果を踏まえ、建物を補強して鶴岡八幡宮に引き継げないか、保存・活用の可能性を協議していく。

調査は、建物の劣化状況や形状把握を目的に昨年9月から実施。特に文化財保護法で国史跡に指定されている境内の地下遺構や意匠を損なわずに耐震補強できるかが焦点となっていた。

調査結果によると、現状の建物は耐震基準を下回っているものの、基礎部分のコンクリートや鉄骨は建設時の強度を保っていた。

受託業者が提案した耐震補強工事は(1)壁面の鉄骨補強材37カ所を交換し、2階床と屋根に新たに鉄骨補強材39カ所を加える(2)補強材追加による荷重増を支えるため、鉄骨柱の柱脚と地中梁のコンクリートを補強する-という内容。深く掘削する必要がないので、地下遺構を傷つけることなく工事が可能という。

鶴岡八幡宮は神奈川新聞社の取材に、「今まで残せるか分からなかったが、今回の調査で保存できる可能性が示された。これから県と協議して対応を検討したい」と話した。

同館は、世界的な建築家ル・コルビュジエの弟子に当たる故坂倉準三の設計で、1951年に日本初の公立近代美術館として開館した。これまでに日本建築学会や日本建築家協会、鎌倉市民などが「モダニズムの代表的建築物と歴史的景観の組み合わせ、たたずまいは国内で類を見ない重要なもの」として、保存と活用を求める要望書を県に提出している。

◇次の焦点は費用負担

○解 説○

今回の調査で得られた「地下遺構を損なうことなく耐震補強が可能」という結果は、県立近代美術館鎌倉館の保存・活用に向け、ハードルの一つを乗り越えたことを意味する。

「2億1千万円」とする概算工事費用も、県教育委員会が当初の契約通り建物を解体し更地にする際の負担を考えれば、決して巨額とはいえない。補強工事を施して建物を鶴岡八幡宮に引き継ぎ、保存・活用していく-という可能性が見えてきたといえる。

次は、工事費用を誰が負担できるかが焦点だ。県教委と鶴岡八幡宮は調査結果を踏まえて建物の扱いを話し合っていくが、物別れに終われば契約通り更地にして返還する決着もある。

費用負担をめぐっては、理由付けや活用方法など丁寧な議論が求められる。自治体が宗教法人に公金を支出する行為は憲法上禁じられており、宗教法人側も自らの宗教活動に使う施設以外に浄財を充てるのは難しい面もあるからだ。

これまで県教委と鶴岡八幡宮は建物の保存を求める声に丁寧に応えてきた。更地にするなら必要のない今回の調査費約1500万円を折半したのもその表れだろう。両者の協議を見守りたいが、保存を求める県民の声の広がりも重要な要素となりそうだ。

【神奈川新聞】

 
 

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