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決められたルール疑う 丸山慎也さん
時代の正体〈50〉ハタチの叫び(下)

社会 | 神奈川新聞 | 2015年1月12日(月) 11:00

大学に復学した丸山さん。「やらなきゃいけないことがたくさんある」と前を向く=横浜市戸塚区
大学に復学した丸山さん。「やらなきゃいけないことがたくさんある」と前を向く=横浜市戸塚区

学費を稼ぐため、和食の料理店でアルバイト漬けの毎日だった。講義に身が入らず、サークルに加わることもなかった。

「こんなことでいいのかな」

明治学院大横浜キャンパスの国際学部に通う丸山慎也さん(20)=東京都中野区=は大学に行く意味を見失っていた。2年生になった昨春、休学届を出した。

せめて英語でも習得しようと、ためたお金でフィリピンに行き、語学研修に参加した。「楽しかった。でも、自分は何をしているんだろうという気持ちは抱えたままだった」

そんな時、インターネットの動画に目が留まった。2013年12月に成立した特定秘密保護法に反対するデモで声を上げる若者たちが映し出されていた。

デモ隊を先導するサウンドカーからはヒップホップ音楽が流れていた。テンポよく刻まれるラップのリズムに重ね、「トクテイヒミツホゴホウ、ハンタイ」「ハンタイ」と叫ぶ。古くさくて堅苦しく、うさんくさささえ感じてきたこれまでの社会運動とは違って、おしゃれだった。

それだけではなかった。世の中を良くするには自分たちが行動するしかないという切実な訴えがストレートに響いた。

自分の大学の学生が中心になって立ち上げた「SASPL」(特定秘密保護法に反対する学生たち)というグループだった。胸の中で歯車がコトリと音を立て、回り始めた瞬間-。

「参加すれば、今の自分から変われるような気がした。秘密保護法のことはよく知らなかったけど、何かやらなきゃ、自分も参加しなきゃ、と思った」

大学に戻り、SASPLの宣伝を手伝うようになった。今風にフライヤーと呼ぶちらしを配り、デモへの参加を呼び掛けた。

打ち合わせに顔を出すと、メンバー同士が議論を戦わせていた。熱く語る先輩や同級生に憧れた。

「日本はこのままじゃ駄目だ」「民主主義はもう終わっていると考える人がいる。だったら、また始めればいい」

自分は隅っこに座って聞いているだけだったが、体の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じた。

デモの列に加わり、マイクを握った。

「民主主義ってナンダ!」

「憲法守れ!」

「戦争するな!」

一体感が心地よかった。内向きで消極的だった自分が少しだけ変われた気がした。

■挫折

ひとたび仲間の輪を離れれば、現実を目の当たりにもした。「一緒にやろう」と知り合いを誘い、距離を置かれるようになった。

「秘密保護法なんて知らねえ」「おまえ、どうしちゃったんだよ」「理屈っぽい。面倒くさいやつだな」

自分の努力が足りないからだと思い、先生に頭を下げ、講義の最中に活動をPRする時間を5分ほどもらった。約50人を前に「デモをしましょう。選挙で投票したところで民意は完全に反映されるわけではないんです」と話した。

しらけた空気が流れた。友人からは「授業の時間をそんなことに使っていいのか」と責められた。

地元の友人を食事に誘って、そこでデモへの参加を呼び掛けようとしたこともあった。

露骨に嫌な顔をされた。「久しぶりに会うのに、どうしてそんな理由で集まらなきゃいけないんだ」

精いっぱいやってもデモに参加してくれた友人は1人しかいなかった。

やがて思い至った。「先輩たちの受け売りを口にしていただけで、自分の言葉ではなかった。だから説得力がなかった。まず、自分の言葉で語れるようにならないといけない」

これからは本を読み、人と会い、自分の頭で考えるんだと思い直した。

「もう押し売りのようなやり方はやめた」

学ぶ意味が見えてきた。

■変化

確かな変化があった。

「与えられたルールを疑う姿勢が自然と身に付いた」

学校では、先生から言われたことに逆らったことなどない「いい子」で通してきた。中学には、休み時間は体育館を使ってはいけないという校則があった。決まりを破って先生に怒られている友人を冷ややかに見ていた。

今なら、体育館で事故が起きないよう自分たちでしっかりと管理すればいいだけではないか、と思う。体育館は何のためにあるのかをまず考え、議論するべきだ。「ルールだから」と言われ、思考停止していたかつての自分を反省するようになった。

特定秘密保護法の整備を推し進めた安倍晋三政権は昨年12月、衆院選で圧勝を収めた。選挙戦のさなかに法は施行された。

「秘密保護法は国のルールになった。でも、知る権利が侵されてしまうのはおかしい。民主主義の国なら、主権者である僕たちがなんとかしなくちゃ」

でも、それは自分の独り善がりではないか。多くの人はそのルールに賛成しているのではないか。賛否があってこその民主主義、正解などあるのか。自分の考えを主張することへのためらいはまだ、ある。

担当教授に悩みを打ち明けると「自分がやりたいこと、正しいと思うことをやるべきだ。不良になれ」と背中を押してもらった。

将来の夢はまだ、ない。少なくとも、おかしいと思うことにはおかしいと声を上げていく人間になろうと思う。

「ルールを当たり前のように信じるのはおかしい。誰かが決めたことに従うだけじゃ駄目だ。決まりは自分たちで作るものなんだ」

やらなきゃいけないことがいっぱいある。大学を辞めようと思っていた気持ちは、いつの間にかなくなっていた。

【神奈川新聞】

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