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【社説】展望2015 社会 不寛容の空気乗り越え

社会 | 神奈川新聞 | 2015年1月9日(金) 10:00

節目の年である。戦後70年。日韓国交正常化から半世紀。6400人超が犠牲になった阪神大震災から20年。オウム真理教による地下鉄サリン事件が発生、教団の暴走の実態が明らかになってからも20年たつ。われわれの社会は、これらの事象から何を教訓として学んできたのだろうか。それがあらためて問われる年でもある。

この20年だけを見ても、社会は大きく変容した。物質的な豊かさを追い求めた経済成長一辺倒ではもはや社会が成り立たないことを実体験した。ボランティアの活躍により、共助の理念と実践が着実に浸透した。一方で、異質な存在を排除しようとする風潮、つまり不寛容の空気は、強まったのではないか。

不寛容さは、時に弱者へ向けられる。横浜市内のある地域では、知的障害者グループホーム建設計画があるが、「トラブルの発生が予想される」「子どもが外で自由に遊べなくなる」など地域住民の強硬な反対に遭い、4年近く停滞している。幹線道路沿いには、反対の意思を示す大きな看板が今も掲げられている。

その地域にも知的障害者はいる。本人や家族がどのような思いで自分たちを全否定するかのような看板を見ているのか、想像するだけで胸が締め付けられる。だが、その思いよりも、住民は偏見に基づいた自らの主張を優先している。そして、反対の声を結果的に容認している地域社会がある。

こうした空気は、この事例に限ったことではない。特定の人種や民族を差別し排斥をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)や、広がる経済格差を「自己責任」にすり替えて切り捨てる論調もまた、その同一線上にあるのではないか。

「大人というものはどんなに苦労が多くても、自分のほうから人を愛していける人間になることなんだと思います」。昨年が没後40年の節目だった画家いわさきちひろの文章「大人になること」の一節だ。排除や不寛容、あるいは利己といった価値観とは対極の存在として「大人」を位置づけている。

そこにあるのは、自らにゆとりがあろうとなかろうと、他者の存在を当たり前のように受け入れる姿勢である。こうした大人が増えることが不寛容の空気を乗り越え、豊かな社会をつくることにつながるのではないか。先人の言葉に学びたい。

【神奈川新聞】

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