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レズビアンのタレント・牧村朝子さん
私を生きる〈上〉好きと言える幸せ

社会 | 神奈川新聞 | 2015年1月6日(火) 13:00

活動への思いを語る牧村さん=相模原市南区
活動への思いを語る牧村さん=相模原市南区

 レズビアンであることをテレビ番組で公表し、多様な性のあり方、生き方をブログにつづって発信している女性がいる。大和市出身のタレント、牧村朝子さん(27)。「わたしは今、大事な妻と幸せに暮らしています。これは『わたしがレズビアンだから』というより、『わたしが妻を愛しているから』です」。その語り口が今、しなやかに響く。

 「レズビアンは女湯に入るのを遠慮すべき?」

 読者が投稿した相談に自身が答えるウェブサイトのコーナー。シェアハウスに住んでいた時、同居人に「レズビアンなの? お風呂のぞかないで」と言われた経験を紹介し、質問に答えた。

 「銭湯で人さまの裸をジロジロ見ないことは基本マナー。レズビアンは関係ない」。あなたがレズビアンか否か、という分類に問題の本質はない-。
 
 「そもそも、女の子が男の子を好きになって『私は異性愛者なんだ。異性愛者である自分を認めなければ』とは思わない。ではなぜ、レズビアンの場合は『私はレズビアンだ。レズビアンの私を認めなければ』となるのか。なぜ、レズビアンの5文字が必要になるのか」

 回り道をしながらたどり着いた一つの答えが、その反問の中にあった。

偽りの自分


 テレビ番組でレズビアンであるとカミングアウトしたのは2012年。その年、国内で出会ったフランス人女性と交際を始めた。女性の仕事の都合で渡仏し、同性婚が法律で認められた13年、結婚した。

 「同性愛者、異性愛者である前に同じ人間」。今ではさらりと口にできることも、そう思えなかった過去がある。

 10歳でした初恋の相手はクラスの女の子だった。教室では先生が、思春期に異性に引かれることを「正常な発達」と教えた。友達の話や目にするテレビ、雑誌では男女の恋愛が当たり前だった。

 「私は異常なんかじゃない」「正しい形にならないといけない」。同性を好きになった記憶を塗りつぶすように15歳で男性と付き合い始めた。「男女交際は歯を磨くことやお風呂に入ることと同じ。しなければならないことという認識だった」

 彼氏に化粧をし、かわいい服を着せ、少しでも女の子に近づけたいという衝動に駆られた。性行為では違和感がつきまとった。楽しくもない交際は長続きしなかった。それでも相性の問題と考え、タイプの違う複数の男の子と交際を重ねた。

 「いい彼女」になるため料理教室にも通い、「苦痛というより、義務感と焦燥感。勉強するように恋愛していた」。タレント活動を始めたのも「正しい女性」を目指すためミス日本に応募したのがきっかけだった。

 「普通で正常」でありたくて重ねた努力。それが努力ではなく、自己否定にすぎないと気付く。「男装してバンドのステージに立ち、女の子にきゃーきゃー言われたこともある。でも、それは男として映っているから。私は女。演じていることに変わりはなかった」

 自分は一体、何者なのか。それを確かめるように22歳の時、新宿2丁目のレズビアンが集まるイベントに出掛けた。「本当にいるのか半信半疑。動物園に行く感覚だった」。どこにでもいそうな、同年代のレズビアンに出会い、一人ではないと思えた。

喜び素直に


 イベントで出会ったレズビアンは同性愛者であることをカミングアウトし、堂々と生きていた。

 やがて思わぬ感情が湧き起こる。「男性としか付き合ったことがない自分は真のレズビアンではない」「この中で認められるために早く彼女をつくらなければ」。手当たり次第に「かわいいね」と声を掛け、「ガツガツしていて、全然モテなかった」

 異性愛者の世界でも、同性愛者の世界でも「正しい形」に当てはめようとしている自分がいた。「異性愛者にならなければいけないととらわれていた後は、レズビアンにならなければいけない、と」

 性に対する人のあり方は十人十色であるはずだ。なのになぜレズビアン、ゲイといった分類をされ、少数者扱いされなければならないのか。交際相手の男性と別れた後、シェアハウスに移り住んだことが転機となった

 そこでは見知らぬ男女が一つ屋根の下で暮らしていた。もう異性愛者を演じることに疲れていた。日常会話の中で「レズビアン」という言葉を使わないカミングアウトをハウスメートにし始めた。

 「彼氏ほしいよね」と話し掛けられ、「私も彼女ほしい」と返事をしていた。戸惑いの表情を浮かべられたこともあったが、やがてレズビアンイベントに出掛けようとすると「いい女を捕まえてこいよ」と言われるようになった。

 「シェアハウスという小さな社会で受け入れられることで、安心を得た」。レズビアンになるために恋愛をするわけじゃない。好きなものは好きと自分が感じたことを言えばいい、と思えた。

 好きな人ができた幸せを素直に口にできる幸せ。妻に出会ったのはちょうどその頃。初めての女性の恋人だった。バラエティー番組でのオーディションを受け、審査員に「最近、何かうれしいことありましたか」と聞かれた。

 「彼女ができました」幸せいっぱいのあまり、何も考えずにそう答えた。「君、レズビアンなの? じゃあ、日本初のレズビアンタレントってことで」。番組のレギュラー出演が決まった。想定外の事態だった。「レズビアンライフサポーター」と名乗る活動が始まった。

まきむら・あさこ 1987年大和市生まれ。タレント・文筆家。2012年にレズビアンであることを公表。インターネットサイトやブログなどで主に多様な性のあり方をテーマに執筆活動を続ける。13年、フランス人女性とフランスで同性結婚。パリ在住。著書に「百合のリアル」(星海社新書)。

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