時代を照らし、残響も鮮やかな言葉の数々がある。年の瀬に小紙をめくり返し、わが心の至言を拾ってみた
▼まず、戦後平和主義の大転換をみた集団的自衛権をめぐって。「いまほど憲法と国民がないがしろにされている時代はない。安全保障の政策論が憲法論に勝ってしまっている」。伊藤真弁護士の憂いは、母子のパネルをかざし、情に訴えかける安倍晋三首相の手法に向けられていた
▼「自分の心を満たすもの、これでいいと思えるものがないから、自我を安定させるものがほしい。しかし不安な人々を確信犯的に操ろうとする政治や団体があることも忘れてはならない」。僧侶、小池龍之介さんは静かに説いた
▼従軍慰安婦問題で国際社会の批判を「いわれなき中傷」と言い切った安倍首相について関東学院大の林博史教授は指摘した。「人権さえ否定している点では欧州の極右政権よりも右に位置している」。師走の総選挙はそして、自民大勝に終わった
▼間もなく新年を迎える。いまの世相を「民主的な全体主義」と評した作家辺見庸さんの慨嘆が暗示的に余韻を引く。「日本の思想、文化、メディアを含め、平和憲法、9条というモラルスタンダードの補強作業をしてこなかった。安楽死だ。闘ってこなかったんだ」
【神奈川新聞】