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【社説】ビキニ被ばく60年 過去の出来事にするな

社会 | 神奈川新聞 | 2014年12月28日(日) 12:00

歴史の闇に埋もれて、今もなお続く苦しみがあることに今年、多くの人が気づいたのではないだろうか。そして、公権力の理不尽さと無責任さにも。

米国は1954年3月1日、マーシャル諸島のビキニ環礁で水爆「ブラボー」の実験を行った。威力は広島に投下された原爆の約千倍とされ、静岡県焼津市のマグロ船「第五福竜丸」の乗組員23人が放射性降下物を浴びて被ばくした。

死者が出た同船は「事件」の象徴となったが、実は同じ年に周辺海域で被災した日本漁船は延べ約千隻あった。マグロ水揚げ基地の三崎港の漁船も数多く含まれる。

だが、そうした船員らの被害の全容は分かっていない。若くして病死した人たち、被ばくを疑い、子や孫の世代に影響が出ないか案じつつ暮らしてきた名もなき人たちがいる。

冷戦さなかのビキニ事件は、日米両政府にとって不都合なものだった。米国は秘密裏に進めていた水爆開発が、人権問題として世界的に取り上げられた。日本では反核運動のうねりが起きた。ゆえに、米側が慰謝料200万ドルを支払うことで政治決着を急いだ。米国の法的責任を不問に付し、両政府は「すべての請求に対する完全な解決」を条件とした文書を交わし、強引な幕引きを図った。その間、わずか10カ月。巧みな世論操作もあって徐々に事件は1隻の被害に矮小(わいしょう)化されていった。

60年の節目を迎えた今年、当時を知る古老が被害の様子を語り、研究者らが実態解明に力を入れたことで、あらためて光が当てられた。

厚生労働省は9月、これまで「保有していない」としてきた文書を情報公開した。長い歳月を経て突如、周辺海域で操業していた漁船の放射能検査などに関する書類が出てくることに驚く。折しも今月10日、特定秘密保護法が施行された。国家権力は、都合の悪い情報はできる限り隠し続けようとするのではないか、との疑念は深まるばかりだ。

ビキニ環礁風下のロンゲラップ島などで住民らが被ばくしたことも心に留めたい。故郷に帰れない島民は世代交代が進み、島での日常や育んできた文化、慣習が奪われてしまった。その姿は、原発事故を経た福島の人たちとも重なる。

ビキニ被ばくの傷は今なお生々しい。歴史上の出来事として終止符を打ってはならない。

【神奈川新聞】

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