横浜市内で2011年以降に開所した保育施設の約6割が近隣に子どもの声が漏れ聞こえることを気にしていることが、横浜国大などの調査で分かった。県外では保育中の子どもの声を騒音として訴訟に発展したケースもあることなどから、保育施設側でも子どもの声に過敏になっている状況が浮き彫りになった。専門家は「萎縮するばかりでなく、近隣住民と関係づくりを進め、子どもにとって望ましい保育環境を維持してほしい」と話している。
調査は、横浜国大大学院の田中稲子准教授(建築環境工学)や当時同大学院生だった高橋藍子さんらが、13年末に実施。同市の「保育所待機児童解消プロジェクト」(09年)発足を受け、11年4月以降に開設した認可保育所、横浜保育室、家庭的保育事業など215施設を対象にアンケートを配布、82カ所(回収率38・1%)から回答を得た。
その結果、約6割の保育施設が近隣に対し、保育時間中の室内の子どもの声を気にしていると回答。保育士の声や散歩など園外活動中の子どもの声についても気にしている保育施設が5割前後に上った。
建物の構造別では、ビル内にある保育施設のような複合型は独立型の施設より音漏れを気にしている割合が高かった。複合型の中でも、店舗や住宅など別の用途で使っていたスペースを保育施設に転用したケースの方が、ほかのテナントと同時入居する新築ビルも含め、保育施設用に新たに建設した施設よりも音漏れを気にしていた。
田中准教授らがいくつかの施設で騒音レベルを測定したところ、実際にはそれほど音は大きくはないにもかかわらず、保育施設側が近隣への音漏れを心配しているケースも見られたという。
ヒアリング調査では、音漏れを心配するあまりに園庭遊びや楽器演奏を控えている施設があることも分かった。また「音漏れが不安」と回答した施設の多くは、特に苦情を受けたわけではないにもかかわらず、保育中の音が外に漏れることを危惧していた。
待機児童解消に向けた保育所整備が進む中、横浜市のような都市部では、今後はますます複合型の保育施設が増える傾向にあり、田中准教授は「施設側が保育を行う際の音に過敏になっており、子どもが生き生きと活動できない可能性も考えられる」と指摘。「音は実際の音量の大小よりも、音を発している相手との関係によって、騒音に聞こえることも気にならないこともある。保育施設側も近隣住民と積極的に関係をつくることが重要だ」と話している。
【神奈川新聞】