景気、安全保障、そして憲法はどうなるのか。24日発足した第3次安倍晋三内閣の動向に、他ならぬ自民党の支持者から厳しい視線が注がれている。衆院選で自民大勝をもたらしたその1票1票は必ずしも「白紙委任」を意味しないからだ。「数の論理で押し切るようなことは、あってはならない」といさめる声が早くも上がる。
「憲法を改正し、独立した国家として軍隊を持つべき」と考えている藤沢市内の会社社長(50)はこれまで同様、自民に投じた。経済の立て直しを期待するが、一方で今後の政権運営には危惧を抱く。
よぎるのは昨年7月、十分な議論もなく閣議決定で決めた集団的自衛権の行使容認。今も「時の政権が自衛隊活動や交戦権の発動について決めてしまうことになりかねず、非常に危険」と疑問が拭えない。年が明けてから始まる安保法制の議論を見据え、「国民に信を問いたくないのかもしれないが、10年ぐらいかけてしっかりと話し合うべきテーマだ」と訴える。
三浦市の男性農家(51)も長年支持してきたが、「円安の影響で出荷に使う段ボールは今後値上がりするはず。肥料も輸入物だから厳しくなるばかりだ」。政権が強調する経済対策の効果を実感できず、だからアベノミクスもTPP(環太平洋連携協定)交渉も評価していない。「自民党の単独政権だったら庶民の暮らしへの目配りはさらになくなり、防衛問題にも歯止めがかからなかった」と、全面的に信任しているわけではないと強調する。
同じく南足柄市の農家の男性(62)は、支持している自民の圧勝は好ましくないと野党に投じた。憲法改正も視野に入る状況になっただけに「野党が対峙(たいじ)できる態勢を整えるのはもちろんだが、党内にも政権に疑問を抱く議員はいるはずで、歯止めの役割を期待したい」という。
有権者として安倍首相は「『国民に丁寧に説明する』と言っているが、国民の側も政権が進める政策を注視していかなければ」と受け止めている。
横浜市南区で酒店を営む男性(64)は親の代から一貫して自民を支持してきた。「自民党は地域密着で商店主の味方」と思っている。それゆえアベノミクスの今後に期待するが、「憲法改正は駄目だ」。
有利が予想されていた選挙戦のさなかから「あぐらをかいていたら、すぐに転落するという危機感を持つべき」と見ていたが、選挙戦でさほど議論にならなかった安保法制について安倍首相が「国民の信任を得た」と発言するのを聞き、「支持者の複雑な思いは安倍首相に届いていない」気がしている。だから、と強調する。「次は来年春の統一地方選。安倍政権がどんななことをやるのか、しっかり見極めなければ」
【神奈川新聞】