1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 【減災】高層階揺らす「長周期地震動」 予報の伝え方難しく

【減災】高層階揺らす「長周期地震動」 予報の伝え方難しく

社会 | 神奈川新聞 | 2014年12月23日(火) 03:00

長周期地震動
長周期地震動

大地震の際、ビルの高層階や石油タンクなどを揺らす長周期地震動。その「予報」を2016年度末から始める方針の気象庁が、伝える手段をめぐって難題に直面している。長周期の影響を受ける建物や居住者が限られるため、緊急地震速報のように広く一般に発信すると混乱を招く恐れがあるからだ。同庁が11月に示した素案で配信手段の一つに想定した放送事業者からは異論が噴出。地震とほぼ同時に震度とは別の尺度で揺れが表現されることへの懸念も根強い。

◇利用者は限定、混乱懸念

「放送にはなじまない。テレビやラジオは外してもらえないか」「緊急地震速報の次に震度速報、沖合の地震ならさらに津波警報。この間に長周期地震動の予報を出すというのは理解に苦しむ。受け手の立場で情報の整理をすべきだ」

同月11日に開かれた有識者らの検討会。NHKや日本民間放送連盟の委員から疑問の声が相次いだ。不特定多数に情報を流す放送メディアは、対象者が限られる長周期地震動の予報を伝える手段には適さない、との立場を訴えた。

気象庁が長周期の予報を目指すのは「高層マンションの居住者やオフィスビルで働く人に身の安全を確保してもらう」(地震津波監視課)ためだ。

配信ルートとして(1)自治体の防災無線(2)テレビやラジオ(3)携帯電話(4)希望者らを対象とする気象会社や事業者からの配信-などを想定するが、受け手となるマンション居住者らの人数は数百万人程度。長周期の影響を受けやすい超高層ビルが立ち並ぶ地域も東京、大阪、名古屋の三大都市圏などに限られる。予報を広く知らせることについて同庁も「必要としない人が緊急地震速報と混同して混乱する懸念がある」と認めている。

加えて不安視されているのは、ゆったりとした長周期の揺れの強さを示す階級1~4という新たな尺度の分かりにくさだ。

緊急地震速報として発表され、誰もが体で感じるのはガタガタとした短周期の揺れで、10階級の震度で強弱が表現される。これに長周期の予報が加われば、一つの地震が二つの揺れの尺度で別々に知らされることになる。

このため検討会では、災害情報などの専門家からも「日本人になじみがあるのは震度。長周期の階級をもっと浸透させなければ緊急地震速報の時より導入が難しい」「長周期の階級4が震度4と誤解され、大したことはないと思われないか」との指摘が相次いだ。

同庁もその点を考慮し、階級1~4の違いをイメージしやすい表現案もまとめている。ただ階級4を「猛烈な揺れ」としたことには「少し乱暴な表現」などと異論も出た。予報が発表された場合の対応行動を示す指針づくりも、導入に向けた課題となっている。

気象庁がインターネットを利用して全国1万1千人に行ったアンケートでは、67%が「予報は役立つ」と回答。高層階で東日本大震災の揺れを体験した420人への調査では、さらに高く83%だったという。

こうした結果からニーズは高いとみており、担当者は「一時的に高層ビルに滞在する買い物客らに予報を知らせるためにも、テレビやラジオを含めた複数のルートを確保しておきたい。導入の1年前までには、手段などを固めたい」と説明。放送範囲が限られるケーブルテレビやコミュニティーFMは、伝達手段として有効との見方もある。

災害心理学が専門の広瀬弘忠・東京女子大名誉教授は「限られた人が対象であってもリスク情報を開示して被害軽減に役立てようという気象庁の狙いは分かるが、現状では利用者の理解を高める努力が足りていない。メディアはその点も踏まえ、周知や伝達に協力する姿勢を持つべきだ」と指摘する。

◆長周期地震動

揺れが1往復するのに要する時間(周期)が長い地震波で、気象庁は周期1秒台以上を観測した場合にウェブサイトで発表している。首都圏など軟らかい堆積層の平野部で増幅するほか、遠くまであまり弱まらずに伝わるのが特徴。東日本大震災の際は震源地から約770キロ離れた震度3の大阪市にも影響を及ぼし、高さ256メートルの大阪府咲洲庁舎で揺れが約10分間続き、エレベーターの閉じ込めなどが起きた。2004年の新潟県中越地震では東京都心の六本木ヒルズでエレベーターのワイヤが損傷し、非常停止した。

【神奈川新聞】

減災に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング