1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 賭博依存克服の戦い 「カジノ解禁」足かせに

早期治療、増える需要
賭博依存克服の戦い 「カジノ解禁」足かせに

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月8日(木) 11:27

「弱さをさらけ出し合うことで変わるきっかけが生まれる」と語る田上施設長=横浜市保土ケ谷区の「ヌジュミ」
「弱さをさらけ出し合うことで変わるきっかけが生まれる」と語る田上施設長=横浜市保土ケ谷区の「ヌジュミ」

 賭け事をやめたくてもやめられず、生活に支障をきたす「ギャンブル依存症」。国内には競輪、競馬といった公営ギャンブルやパチンコ店などが身近にあり、潜在的な患者の存在も指摘されている。治療に当たる専門家は「早く適切な治療につなげられる体制づくりが必要」と指摘。カジノ解禁に向けた動きが現実味を帯びる中、早期対策が求められている。

 ギャンブル依存症の疑いがある患者やその家族から寄せられる相談を集約し、研究開発につなげる全国唯一の拠点「久里浜医療センター」(横須賀市)。同センターが2013年6月に開設した「病的ギャンブリング外来」の新規患者数は、初年度こそ16人だったものの、14年度は53人、15年度は100人に増加した。

 河本泰信精神科医長(56)は「需要を示す指標の一つ」とした上で、「潜在的な患者数はより多いかもしれない」と指摘。一方で「患者の8割はカウンセリングで回復できるため、一概に増えたとはいえない」とし、「なぜ依存するか分からず、何をしても満たされない1~2割を見極め、どうやって適切な治療につなげるか」が課題と捉える。

 同外来では、6回のカウンセリングを重ねて依存の根源を突き止め、新たに打ち込める趣味などを一緒に見つけていく。「病気だからギャンブルは断ち切るべきという従来の認識ではなく、自分で原因を特定し衝動をコントロールするサポートが必要」と、依存からの脱却に向けた継続的なケアを続けている。

 厚生労働省の研究班(代表・樋口進同センター院長)によると、国内でギャンブル依存の疑いがある推計人数は536万人(14年)で、成人の約4・8%。諸外国の1~2%に比べて多く、パチンコなどに気軽に手を出せる環境が背景にあることも一因とされる。

 河本医師は「当事者だけでなく、家族がうつ病を併発する場合もある。早期相談、治療に適切に対処できる機関を増やしていくべき」と訴える。

仲間と弱さ見せ合い



リハビリ 一歩ずつ女性専用施設
 「心の隙間を埋めたくて。パチンコ台の前は、誰にも文句を言われない落ち着く所だった」

 横浜市保土ケ谷区にあるビルの一室。テーブルを囲む7人に女性(50)が声を詰まらせる。

 20歳の時、スロットマシンで5万円もうかった。狙い通りに当たる喜びからのめり込み、親の金を盗んだり、車にわざとぶつかる「当たり屋詐欺」で他人の金を奪ったりした。自己破産も経験し、立ち直れる場所を探して、ここにたどり着いた。

 ギャンブル依存症の女性が集う「ヌジュミ」。全国で唯一、女性だけを受け入れているリハビリ施設だ。

 「『打ちたくない』と言ったら、うそ。でもやめられているのは独りで抱え込まず、弱点を見せられる人たちに会えたから」

 通所して約2年。「早く自立したい」と打ち明ける女性に、田上啓子施設長(67)が語り掛ける。「せっかちねぇ。仲間と少しずつ落ち着いていけばいいのよ」

 自身も夫の影響で30代の時にパチンコやポーカーにはまり、約10年で2千万円以上をつぎ込んだ。離婚や自殺未遂、精神科病院への入退院も経験。断ち切ろうと足を運んだ自助グループは男性ばかりで、「世間の目を気にせず、苦しみをさらけ出せる場が必要」と、市の補助を受けて2007年4月に開所した。

 利用は無料。ミーティングや散歩、セミナーなどに20~60代の女性約15人が通う。県内を中心に全国から相談が寄せられ、100人以上を受け入れてきた。

 依存症の女性は世間体や「家庭を壊した」という罪悪感から言い出せず、早期治療につながりにくい問題点もあるという。

 田上施設長は言う。「相談や施設には抵抗があるかもしれない。現状を受け入れ、仲間と経験を分かち合えればきっと目標が見つかる」

カジノ・リゾート施設(IR)に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング