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安倍政治を問う〈1〉「かじ取り 国民の手に」 弁護士・太田啓子さん

社会 | 神奈川新聞 | 2014年11月21日(金) 12:23

太田弁護士
太田弁護士

 世論の反発を受けながら安倍晋三政権が押し切った、特定秘密保護法の制定と集団的自衛権の行使容認。「両者はそれぞれ独立していると認識している人が多いが、根っこでつながっていて、密接に絡み合っている」。横浜弁護士会所属の弁護士、太田啓子さん(38)はそう力説する。一体何が秘密なのか、それは秘密です-。

 政府による秘密保護法の恣意(しい)的運用の危険性を端的に示すものとして、そう言い表されてきた。10月の衆院予算委員会での安倍首相の答弁は、その懸念があらためて証明された瞬間といえた。

 安倍首相は「行政機関が特定秘密の提供を拒む場合、独立公文書管理監にその理由を疎明しなければならないことを明記することを検討している。特定秘密が提供されない場合はきわめて限られると考えている」と監視機関の役割を強調し、意図的な情報の非開示がないようにすると説明した。だが、特定秘密に指定された情報が国民に提示されない可能性については否定しなかった。

 太田さんは言う。

 「集団的自衛権の行使を認める要件に該当するかどうかの判断材料自体が特定秘密に指定され、公開されない可能性がある。ある日、政府が集団的自衛権の行使をすると決め、他国での戦争に自衛隊が派遣されることになっても『理由は特定秘密なので、詳しくは言えません』と言われてしまうようなもの」

 どういうことか。

 「国民生活に大きな影響を及ぼす集団的自衛権の行使が正当かどうかの判断材料がない。例えば、イラク戦争のように大量破壊兵器があると言われて本当かどうか。武力行使以外の方法がないのか。目隠しされて船に乗せられているようなもので、明らかに危険水域に向かっていても、それの危険性を知る手段がないということ」

怒り

 東日本大震災で東京電力福島第1原発事故が起き、ママ友たちの不安を耳にした。自民党が政権に返り咲き、憲法改正がママ友たちの間で話題に上った。憲法について語る出前講座を始めた。

 原動力は「恐怖と怒り」だ。

 「福島第1原発事故後の政府の対応はひどかった。だが、それ以上に、政府に従順でありすぎる日本社会の風潮に恐怖を感じた。もっと、みんな怒らなければいけないんだ、と」

 気軽に立ち寄れるようにとの思いから、場所はカフェやお好み焼き屋などさまざま。いつしか「憲法カフェ」と呼ばれるようになった。

 そこで希望を見た。

 「憲法について考えたこともなかったというお母さんが真剣な表情で聞いてくれる。チラシを見た大学生が、友だちを誘って勉強会に来る。少しずつではあるけれど、その輪が広がっている」

 悲観的な声も届く。「選挙に行ったって意味がない」「デモをすることに何の意味があるのか」

 そんな時、必ず言うことにしている。「無駄なことは何もない。政府は国民が諦めることを狙っている。無力感を学ばせようとしている。そうなったら、政府の思うつぼだ」

 太田さんは2児の母でもある。

 「絶望的な社会状況に置かれてもなお、希望を見いだそう、希望がないならつくりだしていこう。そういう生き方を子どもたちにはしてほしい。絶望したり、無力感にとらわれたりして生きてほしくない。親としてあの時も、こんなにひどかったけれど『お母さん、希望を捨てなかったし、小さな希望を大きく育てたよ』と示したい」

選択


 12月10日の施行が迫る秘密保護法。「目的は、国民を萎縮させるところにある。例えば、デモ。デモで訴えたい、言いたいと思うことは特定秘密の漏えいの教唆ではないと思うが、逮捕されるのは怖いから、念のためやめておこうと思ってしまうかもしれない」

 それは情報を国民に届ける報道機関も萎縮しかねない。

 「そうなると、いろいろな情報が流通しづらくなる。情報がないから自分が『この情報を知らない』ということすら気が付かない。知らないうちに、本当は知らないとまずいことさえも認識できなくなる」

 情報とは「例えば、食品添加物が入った食品を知りたいと思う人もいれば、放射線量が健康にどれほどの影響を与えるのかについて知りたい人もいる」。自分でどういう風に生きるのかを決める上での最重要事項と考える。

 では安倍政治の行き着く先は、どんな社会か。

 「言いたいことも言えない、おかしいと思ったこともいえない。自分らしく生きることなどできない、そんな社会が待っている」

 いまの日本社会を中島みゆきの歌になぞらえる。

 〈その船をこいでゆけ/おまえの手でこいでゆけ/おまえが消えて喜ぶ者に/おまえのオールをまかせるな〉(宙船(そらふね))

 「オールを政府に預けっぱなしにして、危険水域に進もうとしている船に国民は押し込まれている。もしかしたら、船は沈むかもしれない。水が入ってきて、命を落としてしまうかもしれない。あなたはそれでも何もしないですか。私は自分でオールを握りたい」

 迫る選択が持つ意味は小さくはない。

 =随時掲載

おおた・けいこ 国際基督大を出て2002年に弁護士登録。横浜弁護士会、「明日の自由を守る若手弁護士の会」、「特定秘密保護法対策弁護団」に所属。県内を中心に出前講座「憲法カフェ」を行う。

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