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【社説】津波浸水想定の学校 地域防災教育の拠点に

社会 | 神奈川新聞 | 2014年11月13日(木) 11:00

残念ながら万能の策などない。海の近くで生きるリスクから目をそらさず、そのとき確実に命を守れるよう一人一人が避難を実践する。それが東日本大震災が浮き彫りにした津波対策の教訓であり、現実である。

文部科学省から先ごろ公表された公立学校の津波対策状況調査で、全国39都道府県の2860校に浸水の危険性があることが判明した。

神奈川は、横浜、川崎、横須賀、逗子、三浦、鎌倉、茅ケ崎、藤沢、小田原、大磯の10市町で計88校に上り、関東、東北、北陸の沿岸都県で最多だった。それらの学校や幼稚園は、震災を教訓に最大級の津波を試算した県の新たな浸水予測図で、影響が及ぶ可能性があるとされた沿岸部や川沿いに立っている。

なぜそんな危険な場所に学校が立地しているのか、という疑問の声もあろう。しかし、海をなりわいとする人々の暮らしが連綿とあり、その景観や雰囲気を好んで住まいを構える人も多い。私たちが日々、海から自然の恵みを享受しているということもまた、忘れてはならない。

その前提に立つとすれば、海沿いの学校は自然環境を学ぶ機会に恵まれている、とも捉えられよう。干潟や磯、特殊な海岸地形などから、土地の成り立ちや災害の歴史を知ることができるのは、防災教育の観点からも大きなメリットである。施設的な対策はもちろん欠かせないが、海辺の学びやを安全教育の拠点として積極活用していく発想も必要ではないだろうか。

周囲の地形や環境に目を配り、どこにリスクが潜み、どこにいれば危険を回避できるのか-。訓練やまち歩きなどの実地に座学を組み合わせる取り組みは既に芽吹いており、児童や生徒の備えの意識向上につながっている。

さらに地域との関わりを深め、親世代も巻き込んだ取り組みに広げたい。神奈川において津波の経験は継承されているとは言い難く、必要な対策や備えを身に付ける機会も限られているからだ。

一歩進めて内陸や山間部に学ぶ子どもたちと交流すれば、特徴の異なる地域の災害危険性を相互に理解でき、レジャーなどで出掛けた際の自助にもつながるはずだ。

地に足の着いた実践を続けてこそ、津波に遭遇した際に落ち着いて対応できる。世代や地域を超えた試みを期待したい。

【神奈川新聞】

 
 

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