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司法救済へ全国注目 厚木爆音訴訟あす最高裁判決

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月7日(水) 02:00

各地の騒音訴訟
各地の騒音訴訟

 8日に上告審判決を迎える厚木基地第4次爆音訴訟を、全国6訴訟の原告団が注目する。日米の基地強化が一様に進み、住民の負担は増大の一途にある。自衛隊機の飛行差し止めと将来被害の損害賠償を命じた控訴審判決の維持が、せめてもの願いだ。

小松(石川県)


 航空自衛隊新田原基地(宮崎県)の飛行教導群はことし6月、小松基地に移駐され、F15戦闘機が新たに約10機配備されて計約50機に増強された。日本海上空に国内最大の訓練空域が設定されており、中国による南西諸島の海洋進出をにらんだ航空戦術の高度化が狙いだ。

 F15戦闘機は空自の主力戦闘機で、騒音の激しさは厚木に駐留する米戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットに匹敵する。防衛省は小松の飛行回数は少なくとも2割増えると見込み、騒音の激化を認めている。

 5、6次を地裁で争う小松訴訟団の長田孝志代表(73)は、厚木が行政訴訟で勝ち取った自衛隊機の飛行差し止めが維持されるか気掛かりだ。米軍が駐留しない小松は厚木と基地運用が異なるが、7次以降は行政訴訟による提起を前提に検討している。「厚木が道を開いてほしい」

横田(東京都)


 横田は新旧二つの訴訟団が、地裁で別々に係争している。新訴訟団は1次の控訴審判決(2005年)で、将来被害の損害賠償が初めて認められた。ただ、上告審判決(07年)は、「将来分の請求は認めない」とした大阪空港騒音公害訴訟の最高裁大法廷判決(1981年)を踏襲し、一転して過去分のみに減額した。

 以降は全国で過去分のみの賠償を命じる判決が定着している。将来分の賠償が最高裁で争われるのは、この新横田訴訟以来。原告団の大野芳一団長(77)は「厚木は(大阪の)判例を覆してほしい」と期待する。2007年の上告審判決は、裁判官5人中2人が将来分の賠償を支持しており、「可能性は大いにある」とみる。

 日米が共同使用する横田基地は、米空軍新型輸送機CV22オスプレイ10機を17年から配備する。民間機にも開放する軍民共用化の検討も再浮上した。厚木と同じ1976年に1次提訴した旧横田原告団の福本道夫団長(67)は「厚木の判決次第で基地強化の時流を抑えられる」と信じる。

嘉手納・普天間(沖縄県)


 訴訟を重ねるたび、厚木以上に原告が膨れ上がったのが嘉手納だ。地裁で係争中の3次訴訟は、全国最多の2万2千人余りに達した。極東最大の空軍基地を抱え、全国から新鋭機が次々と飛来する。

 厚木訴訟は米軍機に関わる一切の上告が最高裁に退けられ、原告団の新川秀清団長(79)は「司法の対米従属が決定的になった」と憤る。ことし8月に結審したが、判決に厚木の余波が及ばないか案ずる。「最高裁は人権救済最後のとりでとして、矜持(きょうじ)を見せてほしい」

 普天間2次訴訟は、11月に地裁判決を迎えた。米軍機の飛行差し止めと将来の賠償請求はやはり認められなかったが、うるささの程度に応じた過去分の賠償は1次に比べ、厚木と同様に増額された。普天間原告団の高橋年男事務局長(63)は「全国で騒音被害が深刻化している現状を、司法が裏付けている」と指摘する。「ならば、最高裁が本質的な解決策に踏み込むべきだ」

岩国(山口県)


 そして岩国は、一連の米軍再編で最大の負担増を強いられる。2014年に普天間からKC130空中給油機15機を受け入れ、17年に厚木の米空母艦載機が移駐される。最新鋭ステルス戦闘機F35も16機配備されるほか、21年以降に海軍CMV22オスプレイが続く。

 嘉手納と並ぶ航空基地に変貌を遂げつつあり、15年の地裁判決は、艦載機移駐後の騒音激化の見通しを認めた。原告団の津田利明団長(70)は「司法が違法爆音のたらい回しを容認し続ければ、全国で法廷闘争は終わらない」とけん制する。

 
 

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