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坂本弁護士一家殺害25年 オウム犯罪の原点「社会の土壌変わらず」

社会 | 神奈川新聞 | 2014年11月4日(火) 03:00

母さちよさん(左)の前で墓参りをする弁護士 =3日、鎌倉市の円覚寺
母さちよさん(左)の前で墓参りをする弁護士 =3日、鎌倉市の円覚寺

オウム真理教による坂本堤弁護士一家殺害事件は、4日で発生から25年を迎える。命日の前日に当たる3日、一家3人が眠る円覚寺(鎌倉市)で法要が営まれた。母さちよさん(82)や元同僚弁護士、友人ら約50人が参列し、坂本弁護士=当時(33)=が残した足跡を胸に刻みながら、冥福を祈った。オウム犯罪の「原点」とされる事件から四半世紀。「教団を生み出した社会の土壌は変わっていない」と懸念を抱く元同僚は、「事件を伝え続ける」との決意を新たにしていた。

「オウム真理教家族の会」の永岡弘行会長(76)は、墓前で変わらぬ感謝の思いを伝えた。

坂本弁護士と共に家族の会(旧被害者の会)を立ち上げ、信者の奪還に奔走してきた。「誰かがやらなければいけないことがある」という生前の坂本弁護士の一言が、今も活動の源という。あれから25年。酸素吸入器が手放せなくなったが、「いまだに現役の信者がおり、われわれの活動の区切りではない」と話した。

法要には、元同僚らも多く参列した。横浜弁護士会会長の小野毅弁護士(56)は、当初から坂本弁護士と行動を共にし、今もオウム真理教被害対策弁護団事務局長を務める。事件の実情を知らない若い弁護士が増えていることを踏まえ、「弁護士業務の妨害はあってはならないこと。一人一人の弁護士が、負けない気持ちを持つことが大事だ」と話した。

「彼は人を大切にしたいと思っていた。そして、それを自分が一番発揮できる仕事として、弁護士を選んだ」。小島周一弁護士(58)は、志半ばで逝った同じ法律事務所の後輩をこう評す。

一方、オウムに入信した若者たちの「世の中をよくしたい」という当初の思いにも、うそはなかったと考えている。だが結果として、教団は妻都子(さとこ)さん=当時(29)=だけでなく、1歳2カ月だった龍彦ちゃんまで巻き添えにした。「価値観の多様性が失われたところから、ブレーキは利かなくなってしまう」。どこかで自分たちの都合のいいように合理化された「善意」こそ、教団が暴走した要因とみる。

事件から25年がたった現在も、教団を生み出した社会の土壌は変わっていないと感じている。「自分と異なる他者を認め合うゆとりが、どんどん小さくなってきている。『オウム的』な種は、あちこちにあるのではないか」

坂本弁護士が光を当てたことを、あらためて見つめ直してほしい-。そう願っている。

◆「そばにいる。そう思って生きている」

坂本弁護士の母さちよさんは、すがすがしく晴れ上がった空の下、静かに墓前に手を合わせた。

今年も学生時代のクラスメートや元同僚弁護士ら、多くの参列者が集まった。その一人一人に、丁寧にお辞儀をした。墓前には「今年もみんな来てくれたよ」と報告したという。

オウム真理教は「アレフ」に改称、元幹部が設立した「ひかりの輪」とともに、今も存在し続けている。墓参後、取材に応じたさちよさんは、25年を迎える事件について「今でも若い人たちの信者がまだまだ増えているみたいで、それが一番気になる。増えてほしくないし、消滅してほしいという気持ち」と短く話した。

10月に関東を直撃した大型台風では、横須賀市の自宅も強風に見舞われたという。「困ったなと思っていたら、亡くなった主人と息子、都子、龍彦の4人が夢に出てきた。あら、私のことを守ってくれているんだなって」。おだやかな表情を浮かべて、続けた。「そばにいてくれている。そう思って、生きています」

◆坂本弁護士一家殺害事件 坂本堤弁護士=横浜弁護士会所属=と妻都子さん、長男龍彦ちゃんが1989年11月4日未明、横浜市磯子区の自宅アパートに押し入った教団幹部らに殺害された。5年10カ月後の95年9月、新潟県で堤さん、富山県で都子さん、長野県で龍彦ちゃんが遺体で発見された。一連のオウム裁判では、松本智津夫死刑囚が殺害を指示したとされ、実行犯5人とともに殺人罪などに問われ、死刑判決が確定している。

【神奈川新聞】


墓参後、取材に応じる坂本さちよさん=3日、鎌倉市の円覚寺
墓参後、取材に応じる坂本さちよさん=3日、鎌倉市の円覚寺

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