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【社説】公立保育所民営化 家庭支援機能も重視を

社会 | 神奈川新聞 | 2014年10月31日(金) 13:05

公立保育所の民間移管が全国的に進んでいる。自治体が財政難の中、待機児童解消に向け保育所を新設したり、利用者のニーズに合わせ保育サービスを拡充したりするには、公立よりも比較的運営コストの低い民間への移管が効率的だからだ。

そうした中、横浜市は一定数を公立保育所として残す方針を示した。要支援家庭のセーフティーネットとしての機能や、新設保育所へノウハウを提供し、保育の質の向上につなげる役割などを重視した。

背景には育児環境の変化がある。

同市では、児童相談所(児相)が昨年度に新たに把握した児童虐待件数が、前年度比25%増の1159件に上った。

公立保育所が児相と連携して対応する機会も増え、臨床心理士を配置し、児童虐待の早期発見につなげるモデル事業も展開されている。

障害を抱える子どもも増えている。同市の地域療育センターでは、「分かりにくい障害」とされている発達障害と診断される子どもが、この5年で1・6倍に増加した。

保育所等に通う発達障害児も増えているが、民間保育所の約53%でしか、障害児保育が実施されていないのが実情だ。そのため、1園当たりの受け入れ人数は民間1・9人に対し、体制の整っている公立が4・0人と大幅に多くなっている。

同市は2010年以降の4年間で、認可保育所を1・4倍の611カ所(14年4月1日現在)に増やし、13年4月には待機児童ゼロを達成した。しかし急増する新設保育所の中には、児童虐待や発達障害など特別な配慮を必要とするケースの対応能力を、十分に備えているとはいえない施設もある。

公立保育所が長年蓄積してきた経験や専門知識、児相や地域療育センターなどの公的機関との密接なつながりは大きな強みだ。これらを新設保育所とも共有し、保育資源の全体的なレベルアップのけん引役を務める必要がある。

厚生労働省の保育所保育指針は、その役割として、入所家庭だけでなく、地域の子育て家庭に対する支援も位置付けている。

待機児童解消や保育サービス拡充は重要なテーマだが、困難を抱える家庭を支える保育所の役割も軽視できない。公民双方の強みを生かしてバランスよく整備し、地域の親子をこまやかに見守りたい。

【神奈川新聞】

 
 

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