横須賀市内で23年間、生活困窮者らの悩み相談に応じ、支援してきた福光洋一さん=藤沢市朝日町=が、がんで亡くなった。少年時代に東京大空襲に遭うなど陰惨な時代を生き抜き、その信念から社会的弱者に寄り添い続け、25日、84年の生涯を終えた。
福光さんは病院職員として勤務後、1991年にJR衣笠駅前で、悩みの無料相談所「くらしの相談センター」を開設。暮らしに行き詰まり切羽詰まった生活困窮者や多重債務に苦しむ人々など、多種多様な相談に優しい笑顔で応えてきた。相談件数は23年間で約1万件に達した。
そうした活動が評価され、2002年に横浜弁護士会人権賞を受賞。体調が悪化したため今年に入って同センターを閉じ、自宅で電話相談を続けていた。
戦争体験者として平和の尊さも訴え続けた。8月10日、同市長沢で開かれた戦争体験を語り継ぐ会には、つえをついて参加。「戦争というのは本当にひどい。こんな罪なことはない。死んだ人間も残った人たちも悲しみ、憎しみがある。戦争でそういうことを学んだ」と語りかけた。
講演の機会は最後となったこの日、旅立つそのときを見据えてか、子どもや親世代を前に自らを奮い立たせながらこう締めくくった。
「僕は今、毎日が充実している。生きているのがこんなに素晴らしいものかって。これからを生きる君たちには本当に幸せになってほしい。大人には、子どもが夢を持てるような社会をつくり上げる責任がある。一人の声はささやかかもしれないが、みんなでやれば必ずできる」
【神奈川新聞】