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富士山噴火初の合同訓練:御嶽教訓に意識新た 備え不足痛感

社会 | 神奈川新聞 | 2014年10月20日(月) 03:00

降灰後に土石流の恐れがあるとした訓練で、自衛隊車両に乗り込む秦野市蓑毛地区の住民たち
降灰後に土石流の恐れがあるとした訓練で、自衛隊車両に乗り込む秦野市蓑毛地区の住民たち

富士山噴火で降り注ぐ大量の火山灰から、どう逃れるか。神奈川、静岡、山梨の3県が初めて実施した19日の合同訓練には、神奈川県西部の住民約400人が参加し、安全な避難の手順やルートを確認した。折しも御嶽山(おんたけさん)(長野・岐阜県)で戦後最悪の火山災害が起きたばかり。わが身に置き換えて真剣に取り組み、備えの不足を痛感する住民の姿があった。

降灰が30センチに達し、雨の予報で土石流の危険性が高まったと想定した秦野市。孤立の恐れがある蓑毛地区の212世帯に避難勧告を発令し、ヘルメットや帽子をかぶった住民が次々とバスや自衛隊の車両に乗り込んだ。

「火山灰が積もったらパニックになるし、子どもは歩けない。訓練しておくことが大事」と、幼い子ども3人を連れた主婦米内山佳子さん(32)。蓑毛中自治会の新倉雅章会長(63)は「御嶽山の噴火があり、皆熱心だった」と実感する一方、「富士山の噴火で孤立の危険性があるとは知らなかった」と自らも意識を新たにしていた。

倒壊家屋からの救助訓練も実施された開成町の県足柄上合同庁舎では「火山灰を吸い込まないよう、マスクやタオルで口を覆って」と自治体担当者が繰り返し呼び掛け、避難してきた住民は炊き出しのカレーをほお張りながら、「屋根の上の火山灰を下ろすのは、高齢者には危険」「道路の火山灰はどう処分すればいいのか」などと話し合った。

大量の火山灰を噴出した1707年の宝永噴火で深刻な影響を受けた山北町に住む自営業藪田英介さん(36)は「交通網がまひするので、水や食料の備蓄が大切。今回の訓練を機に噴火への備えを考えたい」と表情を引き締めた。開成町の主婦鈴木栄子さん(71)は宝永噴火後、酒匂川で洪水被害が相次いだと古老に聞かされたことがある。「これまで現実感はなかったが、御嶽山のニュースを見て、昔聞いた言葉を思い出した」とかみしめていた。

静岡県庁で行われた合同対策会議では、居住地に重大な被害を及ぼす噴火が差し迫った状況を想定。出席した神奈川県温泉地学研究所の里村幹夫所長は「神奈川では降灰への意識や危機感はこれまであまり高くなかったかもしれないが、お年寄りら災害弱者の避難は難しい。今後も訓練を重ねるべきだ」と訴える。

◆「シェルター」障壁多く 突発噴火対策急務

「富士山が御嶽山のように突然噴火したら、現状では手の打ちようがない」。静岡県の担当者は頭を抱える。19日の合同防災訓練も予知が前提だ。静岡県の川勝平太知事は14日「(避難用の)シェルター設置検討を始める段階だ」と表明したが、景観、法的手続きなど実現への障壁は多い。突発的な噴火から登山者をどう守るか。対策が急務となっている。

富士山火山広域避難計画は、火山活動を監視している気象庁からの情報に基づき「噴火前に登山客の入山を規制し、早期の下山を促して住民らとともに避難させることができる」としてきた。

そのため、富士山で突然の噴石から身を守るシェルター設置は検討すらされていなかった。訓練でも、登山者を山中から避難させる内容は取り入れられなかった。

山梨県の横内正明知事もシェルターについて「設置が必要ではないか」と述べ、導入には前向きだ。ただ、設置には文化財保護法や自然公園法の手続きが必要で時間がかかる。それ以外に景観を損なう恐れもある。

専門家からは他の対策を優先すべきだとする声も上がる。小山真人静岡大教授(火山学)は「登山者に十分な装備やヘルメットの着用を義務づけることや、入山前に携帯電話のメールアドレスを行政に提出するといった取り組みが先決だ」と訴えた。

【神奈川新聞】

 
 

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