
相模川を挟み平塚市と寒川町で一体的なまちづくりを行う「ツインシティ計画」が、にわかに動きだしている。平塚側では本年度中の土地区画整理組合設立に向け市長自ら地権者を戸別訪問し、寒川側ではまず中心部に絞り込んだ整備手法に変更。東海道新幹線新駅の誘致に不可欠なリニア中央新幹線の着工が10月に見込まれていることなどを追い風にするが、地権者からの反発も根強い上、JR側も慎重姿勢を崩していない。両市町の進捗も足並みがそろっておらず、先行きは見通せていない。
平塚市の落合克宏市長は7月中旬から1カ月かけ、同計画の平塚側・大神地区の地権者宅を訪ねて回った。その数延べ30軒ほど。いずれも、土地区画整理事業の施行者となる地権者組合の設立に同意していない地権者で、事前に連絡しない“アポなし”訪問だ。
組合設立の要件は、地権者と土地面積の「3分の2以上の同意」だが、現状では土地面積が要件を満たしていない。戸別訪問の理由について、市長は「地権者の同意率が上がらず、まちづくりの必要性を丁寧に説明して心配を解消するため」と説明する。
だが、地権者からは厳しい目を向けられている。8月末に行われた地権者向け説明会では、「(市長の訪問は)圧力だ」「(区画整理事業は)市と県がやりたいといったこと。地主は自分たちがやりたいといったことはない」「計画の白紙撤回を」などといった反発の声が続出した。
市議会9月定例会でも、質問が相次いだ。当初、本年度中の組合設立を目指していた落合市長は、「本年度内は厳しい」との認識を示しながらも、「何とか頑張りたい」と意気込んだ。
倉見地区が新幹線新駅計画地となっている寒川町でも、9月上旬に地権者向けの説明会が行われた。町はこれまで計画エリア全63ヘクタールを一気に開発する前提で事業を進めてきたが、「広すぎる」として、まずは新駅を中心とする24ヘクタールの区域から整備する方針に変更したためだ。
ただ町にとって、事業推進の前提は新駅誘致。土地区画整理を選択した平塚側と異なり、事業手法すら決まっていないのが実態だ。説明会では、住民から「新駅建設が決まらない段階でまちづくりをするのか」「具体的なものが示されていないのでは意見も言えない」と厳しい声が出た。
町は、新駅周辺のまちづくりの「イメージ」(担当課)を住民と共有し、JR東海に新駅設置を働き掛けたい考えという。
ただ、JR東海は慎重姿勢を崩さない。同社は2027年を目指す「リニア新幹線開業が先決」と強調、新駅の検討も「開業後に東海道新幹線の輸送力に余裕が生まれれば」という条件付きで、誘致側が期待する新駅とリニアの同時開業は「想定外」という。
まち開きの時期も見通せていないのが現状だが、市町を支援する県環境共生都市課は「計画は確実に進んでいる。今後もまちづくりが順調に進むよう、両市町を支援したい」と話している。
◆ツインシティ計画 平塚市大神地区と相模川対岸の寒川町倉見地区を新橋で結んで一体的なまちづくりを進め、倉見地区に新幹線新駅を誘致、環境共生モデル都市を形成する計画。県と県東海道新幹線新駅設置促進期成同盟会が2000年に基本計画を策定、当初の「まち開き」は15年とされた。県は両地区を結ぶ新橋「(仮称)ツインシティ橋」について、新駅の開業目標である27年までに供用を開始したい意向を示している。
【神奈川新聞】
