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気象庁の注意情報
竜巻予測の精度向上へ 見逃し・空振り減、発表早く

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月4日(日) 11:10

藤沢市内の竜巻発生翌日、倒れた街路樹を調べる横浜地方気象台の調査班=2015年8月18日、同市亀井野
藤沢市内の竜巻発生翌日、倒れた街路樹を調べる横浜地方気象台の調査班=2015年8月18日、同市亀井野

 竜巻や激しい突風の発生が予想された場合に気象庁が発表する竜巻注意情報の精度が15日から向上する。予測に新たな知見を加味するとともに技術的な改良も実施。情報を出せないまま竜巻が発生する「見逃し」や発表しても起きない「空振り」が減り、発表のタイミングも最大で30分程度早まるという。発表単位も細分化され、神奈川はこれまでの県全体から東部と西部に分かれるため、竜巻のリスクが身近な場所に迫っているかどうか判断しやすくなる。

 竜巻による近年の大きな災害事例は▽茨城、栃木県で住宅約1200棟が損壊し、倒壊家屋の下敷きになった1人が死亡(2012年5月)▽埼玉、千葉県で約1400棟の住宅が損壊、60人以上が負傷(13年9月)-などがあり、神奈川でも15年8月に藤沢市や横浜市泉区で竜巻による被害が出ている。

 ひとたび発生すれば、住宅の屋根が巻き上げられたり、車が横転したりするが、気象現象としては規模が小さいため、正確な発生予測は困難とされてきた。

 それでも研究の進展に伴い、気温や風、大気中の水蒸気量などの条件次第で竜巻が起きやすいかどうかを判断できるようになってきたことから、予測手法に反映。さらに、竜巻などを発生させる発達した積乱雲の形成状況を捉えるため、高性能な気象レーダーも新たに活用し、危険な状況をより正確に把握できるようにした。

 一連の改善による効果を検証するため、12年4月~14年9月に確認された竜巻について改良後の手法で予測したところ、40%だった竜巻の捕捉率が70%に、的中率は3%から14%に上昇することが判明。中でも、埼玉や栃木などで竜巻が多発した13年9月の事例については、発生の30分前に注意情報を出せたり、注意情報が発生後や未発表だった地域に事前に発表できたりすることが分かった。

 こうした精度改善策に加え、注意情報の発表単位が細分化されることで、竜巻の発生リスクの高い地域が絞り込めるようになる。「危険回避の行動に役立ててほしい」と気象庁は呼び掛けている。

「9~10月」「首都圏」多発



ピンポイントは不可能

 竜巻の発生は季節や場所を問わないが、一定の傾向もみられる。気象庁の集計によれば、年平均25個程度が確認され、多発するのは台風シーズンの9~10月。平地の広がる沿岸部で目立ち、首都圏も発生が多い。

 竜巻は、発達した積乱雲によって発生する激しい渦巻きのことで、漏斗状や柱状の雲を伴う。短時間で消滅するが、移動の速度が速く、被害の範囲が帯状となるのが特徴だ。

 2015年8月17日、藤沢市から横浜市泉区にかけて発生した竜巻の被害範囲は幅180メートル、長さ8・2キロ。屋根瓦の落下や物置の転倒、倒木があり、重傷者も出た。横浜地方気象台が行った住民らへの聞き取り調査では、「ゴーという音がして、音は1分以内で過ぎ去った」「強風はあっという間に過ぎ去った」といった証言が得られており、10分以内で終息したとみられる。

 この竜巻が発生したのは午後2時ごろとされているが、竜巻注意情報の発表は間に合わず、午後2時48分だった。こうしたケースでも発生前に情報を出せるかが、改善策を講じた後のポイントとなる。改善後もなお、竜巻の発生場所を限定したピンポイントの予測はできず、気象庁の検証では発生を事前にキャッチできないケースが3割は残る。

 気象庁は竜巻が発生した場合について「建物の被害は防げないが、身を守る行動につなげることは可能」と強調。「異変を感じたときは頑丈な建物の中に逃げ込み、室内にいる場合は雨戸を閉めたり窓際から離れたりする」ことを求めている。

 
 

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