県央地区に航空会社のパイロットを目指す操縦士を養成する大学がある。相模原市中央区などにキャンパスを置く桜美林大学。2008年のコース創設以来、3期生まで42人がパイロットとして航空会社に就職した。国内大手航空会社で長年パイロットを務め、指導にも当たってきた宮崎邦夫教授(67)に現状を聞いた。
近年のパイロットの採用事情について、「慢性的な人材不足の状況が続いている。売り手市場だからこそ養成する人材の質が問われる」と気を引き締める。
パイロット不足は団塊の世代が定年を迎えた08年前後から顕在化。さらに格安航空会社(LCC)などの相次ぐ登場もあり、需要はなお高いという。
宮崎教授は「職人的な操縦技術とともに欠かせないのがエアマンシップ」と強調する。「ただ操縦ができればいいのではなく、与えられた環境や条件で周囲の能力を最大限に引き出して理想のフライトに近づけるか。マネジメントの力が、パイロットとして長じるポイントになる」
操縦士を養成するフライト・オペレーションコースでは、2年次秋から4年次春までニュージーランドにある外部養成機関で技術を教え込む。同大プラネット淵野辺キャンパス(PFC)では、学生の意識に働き掛ける指導が重視されているという。
学生生活を全寮制で過ごすのも一例だ。「コックピットでは機長と副操縦士の2人での操縦が基本。意思の疎通や協調性を養っておくことは欠かせない」。校舎内では大学がつくったパイロット服にネクタイを締めるのが決まりで、「決められたことを決められたようにやる、が安全運航の基本。規律を正しく守る意識の向上はとても重要」と説く。
国内航空会社が外国人採用を拡大していることを踏まえ、「語学力にとどまらない高いコミュニケーション能力が求められる」と志願者に求められる課題を挙げる。卒業生42人がエアマンの一歩を踏み出しているが、宮崎教授は「決して就職がゴールでなく、乗客の命を預かるという高い使命感で職務に当たれる人材を送り出し続けたい」と話している。
【神奈川新聞】