人口増の続く川崎市中原区で、住民目線で地域防災の在り方を見直そうとする動きが広がっている。市民グループのメンバーらが市の「市民自主学級」制度を活用し、都市防災を学ぶ講座を開設。「自分の命は自分で守るのがゴール」と、カリキュラム作成や講師依頼に奔走するなど、精力的な活動を続けている。
地震工学の専門家を招いた4日の第1回講座。会場の中原市民館にはシニア層を中心に在住・在勤者ら約30人が集まり、全12回の導入編として地震のメカニズムなどを学んだ。企画・運営は「等々力緑地公園を愛する会」のメンバーで、15年ほど前から中原区に住む室井恵さんら5人だ。
「急増する人口に中原区の防災計画は追い付いているのか」。室井さんのそんな不安が出発点だった。武蔵小杉駅周辺には高層マンション建設が相次ぎ、市の将来人口推計では2035年、現在より3万人多い約27万4千人と予測。東日本大震災当時、勤務地の都内で一夜を過ごした室井さんにとって、帰宅困難者の問題も気がかりなテーマだ。
講座は2月の企画提案会で採用され、約半年かけてカリキュラムを練り上げた。阪神、東日本の両震災の被災者の生の声を聞き、行政担当者らを呼んで地域の防災計画や医療体制も学ぶ。東京臨海広域防災公園「そなエリア」(東京都江東区)や等々力緑地の防災施設を見学するフィールドワークを盛り込むなど、受講者を飽きさせないよう工夫も凝らした。
講師は大学教授やジャーナリスト、防災コンサルタントなど多彩で、企画委員が人選や交渉に当たった。来年1月まで続き、最終回は「私たちにできる防災対策」と題した学習のまとめを行う予定。メンバーの一人、天野捷一さんは「いつ、どこで起きるか分からないのが地震。参加者と一緒に、臨機応変な判断力を養えれば」と話している。
【神奈川新聞】