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遺族、司法の責任追及 横浜事件 一審判決破棄求めー国賠控訴審

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月3日(土) 10:16

閉廷後の集会で、支援者を前に訴訟への思いを語る原告の木村まきさん(右)=都内
閉廷後の集会で、支援者を前に訴訟への思いを語る原告の木村まきさん(右)=都内

閉廷後の集会で、支援者を前に訴訟への思いを語る原告の木村まきさん(右)=都内
閉廷後の集会で、支援者を前に訴訟への思いを語る原告の木村まきさん(右)=都内

 戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の元被告2人の遺族が、国に計1億3800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が2日、東京高裁(野山宏裁判長)で開かれた。遺族側は、賠償請求を退けた一審東京地裁の判断には誤りがあるとして判決の破棄を、国側は控訴棄却をそれぞれ求めた。

 訴訟で遺族側は、元被告が特高警察から過酷な拷問を受け虚偽の自白を強要された点や、1945年の有罪判決に関する訴訟記録が確定直後に裁判所により廃棄されたことの違法性を主張。訴訟記録がなくなったため、再審公判の開始が遅れた点についても司法の責任を追及した。

 6月の一審判決は、特高警察や裁判所の一連の行為の違法性を認めつつも、国家賠償法施行(47年)前の行為は国が賠償責任を負わないとする「国家無答責の法理」を適用。賠償責任を負う根拠がないとして遺族側の請求を退けた。

 控訴理由書で遺族側は、同法理は存在せず、仮にあったとしても特高警察や裁判所の違法行為にまで適用する解釈には誤りがあると主張。元被告の再審請求を拒み続けた裁判所の姿勢にも、「自ら訴訟記録を廃棄した責任を棚に上げ、請求を棄却した裁判官の行為は誠実さを欠き不合理」と批判した。

 これに対し国側は答弁書で、国家賠償法施行前の行為には施行前の法規範が適用されるとした同法の規定を指摘。施行前の法規範は同法理と強調し、「遺族らの主張は一審判決への不満を述べ、独自の見解を展開するにすぎない」とした。

 原告は、戦時中に治安維持法違反容疑で逮捕された元中央公論編集者の木村亨さん(98年死去)と、元南満州鉄道調査部員の平館利雄さん(91年死去)の遺族。2人の死去後は遺族が裁判を引き継ぎ、最初の再審請求から20年近く経過した2005年に再審開始が決定、08年に裁判を打ち切る免訴判決が確定した。

◆人権弾圧に危機感ー「国の方向恐ろしい」

 この日始まった控訴審では、元被告らの遺志を継いだ遺族2人が意見陳述に臨んだ。「横浜事件を二度と起こしてはならない。この国の選択や方向が恐ろしくてたまらない」。事件から70年以上がたつ今なお法廷闘争を続ける遺族の思いの裏には、現代の社会情勢への危機感があった。

 「治安維持法に似たような法律が出てきている」。1998年に死去した元被告木村亨さんの妻まきさん(67)は持参したメモを手に、法廷で率直に不安を口にした。

 似たような法律として挙げたのは、特定秘密保護法や改正通信傍受法、安全保障法制など。閉廷後の集会では「国は手を変え品を変え、取り締まることに懸命。この裁判を夫の名誉回復から広げて、人権を抑圧されている人のための裁判にしたい」と力を込めた。

 平館利雄さんの長女道子さんは体調不良で出廷できず、代理人弁護士が書面を読み上げた。「横浜事件という国による人権侵害問題が、裁判官にはリアリティーを持たない過去の出来事のように見えているとしか思えない」。訴えを退けた一審判決をそう批判した。

 傍聴した道子さんの弟の孝雄さんは「姉は、過去に犯した自身の罪を裁くことのできない、自己批判できない司法の体質に怒りを感じている」と説明。「三権分立の制度上、一つの権限を担う存在として司法をクリアにしないと、問題のある国になるのでは」と姉の思いを代弁した。

 代理人の森川文人弁護士は「治安維持を名目に行われた横浜事件という思想弾圧の本質がどういうものなのか、現代的な問題としてぜひ考えてほしい」とした上で、こう結んだ。「私の中では横浜事件の国賠訴訟を、権力による弾圧をはね返す力にしたい」

◆横浜事件 1942年から終戦にかけて雑誌編集者や新聞記者ら60人以上が、共産主義活動をしたとして県警察部特高課(当時)に治安維持法違反容疑で逮捕された言論弾圧事件。30人以上が起訴され、大半が戦後に有罪判決を受けた。名誉回復を求める元被告や遺族らは86年以降、4度にわたって再審を請求。2005年と08年に再審開始が決まり、再審公判では08年と09年に免訴判決が確定した。遺族は刑事補償請求も行い、刑事補償金が支払われた。

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