鎌倉市七里ガ浜と、宮城県七ケ浜町(しちがはままち)。似た名前を持つ二つのまちの住民たちが、東日本大震災を機に交流を深め、友情を紡いできた。その活動を後押ししようと、両市町はこのほど、パートナーシティとして提携。今後も住民同士の交流を後押しすることになった。
市民団体「七里ガ浜発 七ケ浜復興支援隊」(七七支援隊)が発足したのは、震災発生2カ月後の2011年5月。代表の中里成光さん(44)が復興支援で訪れた七ケ浜町が、地名だけでなく海岸線に面した地理も地元・七里ガ浜を想起させたことがきっかけだ。
翌6月からことし8月までに計29回、延べ千人以上の鎌倉市民が、夜行バスで七ケ浜町へ赴いた。
炊き出しや海岸清掃、夏祭りの手伝い。さらに、“与える”だけの支援ではなく協働でできる取り組みをしようと、現地NPO法人と話し合い、12年春からは仮設住宅脇での畑作りを始めた。住民とともに、ジャガイモやトマトを育てた。町民も鎌倉を訪れ、交流は深まっていった。
こうした足かけ4年の活動を行政同士が手を結ぶことでさらに広げていこうと、中里さんはことし5月、市民の都市間交流に“お墨付き”を与える鎌倉市のパートナーシティ制度に申請した。11年6月にスタートした同制度で、七ケ浜町は韓国・安東(アンドン)市(13年7月)に続いて2例目の提携都市となった。
8月9日には、松尾崇市長が署名した提携書を携え、中里さんが七ケ浜町を訪問。渡辺善夫町長と提携を交わした。中里さんは「今回の提携が、(両市町の)長い関係をつくっていくきっかけになれば」と期待を寄せる。市からは年1回、3万~5万円の奨励金が支給される。
七ケ浜町は現在、津波被害に遭った沿岸部の住民らが高台へ移転するための造成、建築工事が進んでいる。「しかし、人の心は震災のときのことを忘れられない」。今後も支援を続けようと、中里さんはあらためて考える。「七ケ浜町への訪問はもう、親戚や友人に会いに行くような感覚です」
【神奈川新聞】