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ジャズピアニスト・野村郷詩
【ひとすじ】「子どもをなめんなよ」

社会 | 神奈川新聞 | 2016年12月2日(金) 12:24

姉の琴音(右)と息を合わせるサト
姉の琴音(右)と息を合わせるサト

 横浜・みなとみらい21地区(MM21)の路上イベントで、2人組がトランペットとキーボードを演奏している。レパートリーは「モーメンツ・ノーティス」「スピーク・ロウ」「イパネマの娘」などジャズの名ナンバーから「横浜市歌」まで幅広く、通行人が次々と立ち止まる。たちまち道に人だかりができる。

 ハマの音楽シーンですっかり名の知れる存在となった10代の姉弟ジャズユニット「サファリパークDuo」。キーボードの野村郷詩(さとし)(12)=横浜市磯子区、愛称サト=は、姉の琴音(18)の隣で心地よさそうに旋律を操っていた。

♪ 原  点 

 
 どこにでもいる横浜市立中学1年の男子生徒。そんなサトが音楽を始めたきっかけは、慕っている姉、琴音の存在だった。

 知的障害がある姉は特別支援学校に通っている。小柄で力が弱く、5歳になるまで歩けなかった。赤ん坊のサトが泣きだすと、よちよち歩きでベッドまで来てあやしてくれた、と両親から聞いた。物心ついたときからずっと、そんな優しい姉が大好きだった。

 姉は小学5年のとき突然、学校のクラブ活動でトランペットをやりたいと言い出した。コンサートで見たトランペットの女性奏者に憧れた。「楽器は重いし、手の力が弱い琴ちゃんには無理」と教諭は止めた。反対を押し切り練習を始めた姉は、他のメンバーと一緒にステージに立つまでに上達した。背筋を伸ばして楽器を構える姿。心底かっこいいと感じた。

 「僕も伴奏のピアノを弾けるようになって、お姉ちゃんと一緒に演奏したい」と、ピアノ教師の母親に特訓を願い出た。まだ小さい手でも演奏できるよう、ジャズの編曲を元ドラマーの父親に頼み込んだ。初めて姉と2人だけでステージに立ったのは小学1年の秋。横浜市栄区のイベントだった。足を止める観客の姿が見える。緊張も忘れて笑顔になった。楽しかった。

 その日の写真は、いまもライブで掲げる紹介パネルに使っている。「新しいものに替えたら、と言ってくれる方もいるんですけど、このときの気持ちを忘れずに続けていこうと思って」

 
 

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