生後5カ月の男児をマット上へ投げ落とすなどしたとして、暴行罪に問われた川崎市中原区、元ベビーシッターの女(51)の論告求刑公判が25日、横浜地裁川崎支部(駒井雅之裁判官)で開かれ、検察側は懲役1年を求刑した。判決は9月8日。
検察側は論告で、「一歩間違えれば重大な傷害を生じかねない。密室で1時間以上も暴行しており、卑劣かつ危険で悪質」と指摘。「保育需要が高まる中、信頼を失わせた社会的責任は大きい」と述べた。
弁護側は最終弁論で「約10年間、まじめに乳幼児保育をしてきた。深く反省している」として情状酌量を求めた。被告は「赤ちゃんや保護者に申し訳ない」と謝罪した。
起訴状などによると、被告は4月19日、同市宮前区で、男児を逆立ちさせてからマット上に転倒させたり、背中や顔を手のひらでたたいたりした、とされる。
■泣き叫ぶ息子の姿に震えが止まらず
映像に残っていたのは、布団に放り投げられ、平手打ちをされて泣き叫ぶ息子の姿だった-。25日の論告求刑公判。意見陳述した男児の母親は「息が止まりそうな気がした。次は何をされるのかと怖くて、震えが止まらなかった」と、事件の全容を目の当たりにした当時を振り返った。
「かわいい赤ちゃんですね」。事件当日。約3時間の保育後、被告はそう言って自宅を後にしたという。母親は、腫れ上がった男児の顔に異変を感じながらも深くは追及できず、室内のペット監視用カメラの録画映像を見直した。
生後5カ月。首の据わらない乳児が放置された後、やがて布団に放り投げられた。「映像が怖かった。もう何もしないで」。祈る母親をよそに、画面中の暴行はエスカレートしていく。小さな顔をたたいたり、額を指ではじいたり。
この日、体調を崩していた息子を保育園には預けず、自宅で静養させようと保育を依頼したという。母親は「ベビーシッターを頼んだことを後悔した。許す気持ちはない」と訴えた。被告は被告人質問で「仕事のストレスがあり、乱暴だった。保育する人間として適切ではない」と、ただ謝罪を繰り返すばかり。真相を口にすることはなかった。
【神奈川新聞】