「建設業界の現場には掃除や荷積みなど雑務をしてくれる“球拾い”が必要。これまでは高卒の10代が担ってきたけれど、今の最年少は23歳。ここ数年若手を採用できていない」
横浜市内にある従業員十数人の建設会社の社長(36)は危機感を募らせていた。若手の募集に年間数百万円かけても、応募がないのだという。
「どんどん高度な仕事を覚えてもらいたいのに、これでは従業員を成長させられない」
景気回復で建設需要は増えた。背に腹は代えられないと、この社長が頼るのが外国人だ。8月にもベトナムへ出向き、技能実習制度の枠組みで2~3人の若手を受け入れることにした。
急場をしのぐ付け焼き刃と知りながらの苦渋の選択。だがその先にあるのは何か。
「一時的に外国人を受け入れても、数年で帰国する。日本の若者を雇用しないことで、技術の継承が途絶え、中堅作業員のいない業界ができあがる。日本の誇るべきものづくりはどうなってしまうのか」。社長は表情をこわばらせた。
■□■
県内ゼネコンの松尾工務店(横浜市鶴見区)では、昨年12月から建設分野の技能実習生として22~25歳のベトナム人3人を受け入れた。
「将来は船を買って船長になりたい」と話すルオン・バン・クイさん(22)もその1人。