相模原市は本年度、首都直下地震の被害想定を約8年ぶりに見直した。避難所への避難者は最大で約6万1千人と、従来より1万6千人増となった。重要性が高まる避難所運営に際し、市はどんな備蓄を進めているのか。公共施設では市内最大の防災備蓄倉庫を訪ねた。
備蓄拠点の中核として市内10カ所にある一般倉庫のなかで最大の「緑が丘分署防災倉庫」(中央区)を訪ねた。小中学校など105カ所に整備された避難所倉庫に物資を補給する役割などがある。
建物は鉄筋コンクリート造の2階建て。案内役の市危機管理課職員がまず足を止めたのは食糧備蓄の棚。並んでいたのは大量のクラッカーやビスケット箱だった。「乾パンが定番だが、高齢者や幼児もより咀嚼(そしゃく)しやすいことを重視した」と職員。おかずとしてはチキンシチューや豆のチリソース煮など洋食が充実していた。
同倉庫を含む市全体の食糧備蓄は、避難所への避難者の従来想定に2千人余裕をみた4万7千人の3日分となる42万食を、ほぼ充足済みという。
同課は想定避難者数が増加しても、現在の備蓄数で対応できるとみる。新たな被害想定の6万1千人中、4万1千人は住宅被害がなく断水による避難者との想定のためで、「倒壊を免れた自宅や地域から食糧を活用してもらえれば現状でも乗り切れる」と自助や共助による協力を呼び掛けた。一方で仮設トイレやマスク、おむつなどの一部は備蓄数の見直しが迫られるという。
また市では東日本大震災で複数の職員を被災地に派遣した経験からプライバシー対策も進めている。その一つが女性の着替えや授乳に使えるテント。約2メートル四方の立方体型で収納袋から取り出すだけで簡単に設営できる。避難者の相談を受けるのに使う布製パーテーション、寝泊まりする場所に置く段ボール製の仕切りもあった。
同課は「東日本大震災では避難所生活の長期化で関連死も起きた。衛生用品など健康を守る備蓄品から優先順位をつける一方、ストレスを減らすプライバシー対策も重視していきたい」と説明した。
【神奈川新聞】